フォビドゥンフォレスト・１話前半・３　生徒会と幼馴染たち

フォビドゥンフォレスト＠カクヨム投稿中 @fbd_forest

「フォビドゥンフォレスト１話・英雄たちの遺産　全編まとめ」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1020459

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト・1話前半 1　鳥姫神社の巫女」 togetter.com/li/996758

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト・１話前半・２　登校～西条佐祐里」 togetter.com/li/1001375

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瑠梨も会長の髪に手を伸ばし返し、二人は頬を染めて見つめ合う。 「…あー…そういえば会長は今回は切らなかったんですね…？」 「え、ああ、まあ１.４センチですからね」 わざと二人の雰囲気に水を差した。こんな人目に付くところでこれ以上は不味い気がしたからだ。

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ちなみに今のやり取りは一見意味不明だが、瑠梨が髪を切るときには佐祐里さんも一緒に切って長さを揃えるようにしてるってことだ。でも瑠梨のほうが伸びるのが早いんで、瑠梨がちょっと切った程度なら佐祐里さんは切らねぇ。ついでに言うと二人共俺の実家で切ってる。

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「じゃあ後でね。さゆちゃん」 「ええ。あと１０分はかからないと思います」 そんなやり取りをしてる間に掃除当番の連中が来たんで、俺達は先に行っとくことにした。 「にしてもはる君」 「なんだ？」 内履きに履き替えて歩き出した辺りで瑠梨が話しかけてきた。なんか声と顔が非難がましい。 1

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「私が髪切って貰ったの知らなかったよね？」 「切ったのには気付いただろ」 「とぼけないのっ」 しらを切ってみたが、かえって怒らせちまった様だ。 「土日もお家帰らなかったんだね」 「ちゃんと週に一度は帰ってんよ…」 そう、帰ってはいる。ただ前回が先週の日曜ってだけの話だ。 2

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「どうせ先々週の土曜の夜に帰って次の日曜の朝に出てきたんでしょう？」 お見通しかよ。 「なんだよウチの親に聞いたのかよ」 「おじさんたちは何も言わないよ。それで？次は今度の週末？ダメだよ。せめて丸一日くらいはいようよ」 「放っとけよ…」 瑠梨のこういうとこだけは本当に困る。 3

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ちなみに、瑠梨が俺の不在に気づけたのは髪のせいでもある。鳥姫の巫女の髪を切るにはそこそこ面倒な儀式が必要で、ウチの床屋から神社まで出張する必要がある。俺が家にいたなら別に俺まで神社に行かずとも慌ただしさで出張に、つまり瑠梨が散髪したことに気づけただろう。 4

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「良いだろ別によ…そんな遠くに住んでるわけじゃねぇし。ウチの親別に持病もねぇし。大体一緒に住んでたって目ぇ話した隙にぶっ倒れてくたばっちまう時はくたばっちまうんだからよ」 「はる君！ダメだよそういう言い方はっ。それにそういう介護みたいな話はしてないよ…」 「わぁってるよ畜生」 5

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…俺が今親元を離れてんのは…なんつーか、少なくとも虐待されただとかそんなんじゃねぇ。子供のネーミングセンス以外は…まあ世間的に見て良い親なんだと思う。子供のネーミングセンス以外は。つーか本当は親が悪ぃ訳でもねぇ。野郎があんなことをしでかさなきゃ…悪い、取り敢えず忘れてくれ。 6

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それっきり会話もなく俺達は歩いた。せいぜい一分くらいだった筈だが、その何倍かに感じられた。生徒会室の前まで来ると俺達は互いに顔を見合わせ、深呼吸をした。狙ってもねぇのに全く同じタイミングだった。それがなんか面白く、軽く吹き出しちまった。ま、気持ちを切りかけるにゃ丁度良い。 7

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１話前半・ここまでのあらすじ：風科(かざしな)の町に住む男子高校生片桐は、いつもの様に暗いうちに起きて幼馴染の神社の娘、北里瑠梨を起こし、ともに学校へ向かった。校門で生徒会長の西条佐佑里と話すと、彼女より一足先に生徒会室へと向かった。

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生徒会室に入ると時計は25分。会議の開始予定の５分前だ。 「おはよう！みんな」 「おはよ」 「おっ今日もお熱いねお二人さん！」 「いや外さっむいからなラッタ」 永友礼太。通称ラッタ。三人の副会長の一人で。コイツも俺たちの幼馴染みだ。 8

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家も俺達とまあまあ近いコイツが先に来ているのは前のバスに乗ったから…じゃあない。毎朝バスで30分の距離を走り込んでいやがるのだ。 そのせいで声こそテンションが高いが、机と椅子に全力で体重を預けている。胸から上だけで話しかけてきてる感じだ。 9

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スタミナの無さを改善したいそうだが、そんなとこで無駄な体力を使うから、いざって時に保たないんだと言ってやっても聞きゃあしない。 「…おはよう…」 コイツは的場絵理。同じく近所の幼馴染みで会計担当だ。椅子に浅く腰掛けて机のうえで腕を伸ばして突っ伏している。 10

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「なんだ絵里、テンション低いな」 「だって朝練の集まり悪くて不完全燃焼で…」 一見、朝練で疲れてバテているように見えるが騙されちゃあいけねぇ。不完全燃焼ってのは、暴れ足りなかったってこった。どうせ今日も女子ばかりか男子まで全員抜きしてから早抜けしてきたんだろう。 11

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恐ろしいことにラッタと違ってまだ体力は大分残っている筈だ。流石に風科から走り込んできた日はもうちょい疲れてるが…ああその通りだ。毎日じゃないが、コイツも週の半分は走ってきやがるんだ。繰り返すがバスで３０分の距離をだ。なんなんだお前ら。 12

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「おはよー！お茶どうぞ」 金枝先輩。この人も副会長だ。 「ありがとうございます」 「どうも」 俺達の湯呑みを受け取ってから、もう来るだろうから、と佐佑里さんの分も受け取り席に置いた。　13

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緑茶の香りが漂う。立ったまま口をつけ、熱さをこらえて一口だけ一気に飲み干す。喉から胃へ温かさが広がっていく。体の中が温まったところで、コートや手袋やらを脱いで椅子に座った。石油ストーブが程よく効いた部屋の中は制服でちょうど良い。ワイシャツだと寒いしコートだと暑すぎる。　14

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ウチの生徒会は2年の先輩が3人で俺ら1年が6人、中等部が1人（生徒会も中高合同だ）…3年はもういない。今は全員で10人、そのうち今日は4人不在だ。生徒会役員は部活に入らなくても良いとはいえ、実際は俺を含めた殆どのやつは何かしら入ってるのでなかなか全員は揃わねぇ。　15

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ちょっとややこしいが、今日いる俺ら1年4人と、2年の3人はそれぞれ別グループの幼馴染みだが、佐佑里さんと瑠梨だけまた別口での幼馴染みだ。で、俺がこの3人とまともに知り合ったのは1・2年前からのことだ。どうせ今は全員知り合いだし無理に覚えねぇで頭の端にでも置いてくれりゃいい。 16