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人は分かりやすい話ほど信じてしまう—心理学における処理流暢性のはなし

Podoronさん @podoron による心理学講義。 恋愛テクニックでもお馴染みの「単純接触効果」から、「なぜ人類はこのような認知メカニズムを備えるに至ったか?」の仮説まで教えてくれました。
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Podoro @podoron

心理学のprocessing fluencyの研究結果がとても興味深かったのですが、日本語で読めるまとまった解説が見当たらなかったので、記事・論文の内容を訳してざっくりまとめたものを流してみます。

2016-09-12 21:56:19

処理流暢性とは何か

Podoro @podoron

【分かりやすい=真実】  「処理流暢性/processing fluency」=情報を脳が処理しやすいか否か,が人の判断に様々な面で影響を与える事が心理学研究で分ってきました。流暢性が高ければポジティブ,低ければネガティブ,な判断がされる認知メカニズムです。

2016-09-12 22:08:49
Podoro @podoron

「処理流暢性」の影響は,例えば,より見やすいフォントで書かれた文章は“真実性が高い”と判断してしまうのです。

2016-09-12 22:09:38
Podoro @podoron

もし証券会社が「発音し易い名前の会社に投資すべき」とアドバイスしたら,真面目に仕事しろと思うでしょう。しかし,研究者達がNY株式市場の約700銘柄を90~04年まで調べた所,最も簡単な名前の10企業は最も難しい名前の10企業に比べ初日で11%,年間では33%,多く儲けていました。

2016-09-12 22:10:47
Podoro @podoron

「人は分かりやすい情報を好む」なんて,当たり前かつ直感的過ぎて学問的発見には思えませんね。しかし,研究者達が,  ●知覚的流暢性(perceptual fluency:フォントやコントラストの見やすさetc.)

2016-09-12 22:15:20
Podoro @podoron

●言語的流暢性(linguistic fluency/発音・単語・構文の難易度etc.) ●概念的流暢性(conceptual fluency/関連話題・単語を事前に見聞きするetc.)など様々な条件を変えて実験した所,

2016-09-12 22:16:00
Podoro @podoron

処理流暢性が「真実性・好み・自信・知性」の判断など人の様々な判断に無意識の内に影響する事が分ってきました。

2016-09-12 22:17:50
Podoro @podoron

この,流暢性=情報の処理のしやすさ,のみが人の判断を決定する訳ではありませんが,その様な認知メカニズムがある事,それが無意識に私達の判断に影響している事,は知っておいて損はないのではないでしょうか。

2016-09-12 22:18:38

単純接触効果について

Podoro @podoron

「処理流暢性(processing fluency)」でおそらく最も有名で既に多くの人が知っているのは「単純接触効果」でしょう。 興味が無い/苦手なモノでも,繰り返し見たり聞いたりすると,次第に好きになるという効果です。恋愛・ビジネスのテクニックとしてもよく紹介されていますね。

2016-09-12 22:35:57
Podoro @podoron

これは,同じモノ=情報を繰り返し処理することで処理し慣れて流暢性が高まり,流暢性が高いので好意的に判断されるようになる,というメカニズムで説明されています。 この程度であれば,直感的にもまぁまだ納得がいきますね。

2016-09-12 22:38:37
Podoro @podoron

しかし,処理流暢性は私達の想像以上に様々な影響を与えているようです。 例えば,同じ文章・主張でも,  ●フォントが読み易い  ●文字と背景のコントラストがはっきりしていて見易い  ●使われている単語/構文が簡単  ●似た/関連した話・内容を以前に/事前に見聞きした事がある

2016-09-12 22:41:36
Podoro @podoron

と,人は,その文章・主張の内容の「真実性が高い」,書いた人は「頭が良い」,と判断してしまうという研究結果が出ているのです。処理流暢性が高いと無意識に判断まで好意的になってしまう訳です。

2016-09-12 22:43:00
Podoro @podoron

別の研究では,エクササイズ方法や料理レシピが,読み難いフォントで書かれていると読み易いフォントの場合に比べ,エクササイズ内容は難しくレシピは複雑だと感じる事が分かりました。

2016-09-12 22:44:12

なぜこの様な認知メカニズムがあるのか?(仮説)

Podoro @podoron

なぜこの様な認知メカニズムが出来たのでしょうか? 心理学者達の仮説では「人間の脳が発達した原始時代には,馴染みがある=前に見聞きした事がある=以前に処理した事がある/処理し慣れている情報=流暢性が高い,かどうかが重要だったから」と推測されています。

2016-09-12 22:45:12
Podoro @podoron

原始時代,獣や植物あるいは他の人間に出会った時,それが危険かどうか判断する必要がありました。この時,もし馴染みがあるなら危険性は低い,判断に時間・労力をかける必要性が低い,と考えるのは確かに理に適っています。 「もし馴染みがあるなら,まだそいつに食べられてない」って訳です。

2016-09-12 22:46:42
Podoro @podoron

その際,馴染みがあるかどうか判断するのに“毎回きっちり分析して考えこむ”のは得策ではないですね。故に,「流暢性が高い⇒好意的に判断する」というショートカットが認知メカニズムとして発達した,と心理学者達は推測しています。

2016-09-12 22:48:26
Podoro @podoron

原始時代に“危険かどうか”判断するだけならシンプルで問題ありませんが, 「処理流暢性」は,現代の私達の様々な判断にも,無意識の内に,思いもよらぬ形で,影響を与え判断にバイアスをかけてしまっているそうです。

2016-09-12 22:52:17

処理流暢性と認知バイアスの関係

Podoro @podoron

流暢性は,「真実性」「好み」「自信」「馴染み深さ」「知性」など様々な判断に影響する事が分ってきています。 pic.twitter.com/dIoAMhsnQM

2016-09-12 23:06:56
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Podoro @podoron

原因となる流暢性,影響する判断,は多岐に渡りますが,どれも「脳が処理し易いものはポジティブに,し難いものはネガティブに,判断される。」点で一致しています。 pic.twitter.com/JzbLDjwTbF

2016-09-12 23:07:38
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Podoro @podoron

「何がどう影響しているのか」知っておけば,その点を考慮してより良い判断が出来ます。また,その影響を利用する事も出来ます。 具体的に,「処理流暢性(processing fluency)」がどの様に,無意識のうちに人の判断に影響する,バイアスがかかる,のか例を挙げていきましょう。

2016-09-12 23:12:32

① 真実性

「シンプルなものが真実だ」