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    大学生の頃に、車を買った。最初は中古のファミリアカブリオレ。今思い返すとどうしようもないセンスだと苦笑い。そのあと、新車で180SX。当時のバイト代全てをつぎ込んで購入。結局15万キロほど乗って潰した。そういえば当時、車に乗る、というのは大人になるということと同義だった。
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    真夜中のガソリンスタンドでタクシー洗車のバイトをした。一晩で100台ほど洗う。真冬になると本当に寒くてキツかった。けれど、スタンドでバイトをしているとガソリン代も安くなるし、オイルやパーツなども格安で手に入るので貧乏な大学生が車を維持するためには致し方なかった。
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    明け方、バイトが終わるとそのまま彼女を迎えに言って、眠い目でハンドルを握りながらふらふらと遊びにでかけた。そんな時期に車の中で聴いていた音楽というのは、今でも聴くと甘酸っぱい気分になってしまう。とにかく、思いついたらすぐに出かけられる。真夜中であっても。それがよかった。
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    ひとりで日本をぐるっと廻るようなこともやった。とにかくお金がなかったので基本は車中泊。国道4号線の北で、真夜中にどうしようもなく眠くて、サービスエリアで踞ってた。目が覚めると、ガス欠になってしまっていて、バッテリーも干上がっていてしまってた。トラックの運ちゃんが助けてくれた。
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    大学生の中ごろにはもう仕事を始め、車を維持するのも難しくなってしまった。何せ当時の給料は13万。生きていくのに精一杯で、車を維持できるはずもなかった。車の中で聴いていた音楽を、ブースの中からたくさんの人に届けるような仕事だった。毎日、音楽ばかりに囲まれて生活していた。
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    気がつけば、ずいぶんと車を運転していない。あの頃に比べてずいぶんと余裕ができたはずなのに。海外にでかける機会も増えてあちこちに行ったけれど、世界が広がった感じがあまりしない。なにより、初めて自分の車を運転したときには、どこまででも世界が広がったような気がしていた。
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    今、車はもう移動の手段でしかなくて、どんな車に乗りたいかなんてことはどうでもよくて、車が目的になることはなくなってしまった。世の中はどんどん便利になって、どんどん合理的になって、賢くなっていく。車に乗るなんてことは、どこかからどこかへ移動するための手段でしかなくなってる。
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    僕が思春期のころ、「音楽を聴く時間」が存在していた。オーディオの前に座って、何もせずに。いや、何もせずにというのは間違ってる。「音楽を聴く」という行為そのものが、そこにあった。今は、音楽も手段になりつつある。何かのための音楽。目的のための音楽。それを発明したのはウォークマンだ。
  • Opi
    車も音楽も、僕のなかで目的ではなくなってしまった。何かのベネフィットを得るための手段。ただ、それを、する。そういう感覚が薄れてきてる。そんなことを考えながら、ただ、文章を書く、ということをなんだか久しぶりに今こうしてやっています。到着地なんて、書き始めたときには考えてなかった。
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