• 2011/12/03 17:16:20
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    suzukosukeの過ごした退社

    140字ぴったりを使って退社を表現する、退社postというのをやっていたことがありました。
    ある程度満足したので今はやめてしまいましたが、その中でも気に入っているものを集めてみました。
    さあ、退社しよう。足早に、軽やかに。闇に沈む、街を突っ切って。
    by suzukosuke
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  • suzukosuke
    低い灰色の雲が空を覆い、生ぬるい風がゆっくり動いていた。遠くで犬がしきりに吠えている。「いやだな…」私は無意識に足を早める。確か、去年もこんな日だったような気がする。suzukosukeが退社したのは。
  • suzukosuke
    村のはずれに一人の老人が住んでいた。彼は周りの大人と関わりを持たず、木を切ることで生計を立てているようだった。子供の私は、両親の目を盗んでは彼の住む家に通った。「今日は、suzukosukeの退社の話をしよう」彼の話は、いつも私を魅了した。「僕が、まだ君たちくらいの時の話だ」
  • suzukosuke
    リノリウムが小気味よく音を立てる。月明かりに青く照らされた教室は、時間が止まっているように見えた。チョークの甘い匂い、傷だらけの机、suzukosukeの退社。全てが静止していた。「天井、こんなに低かったかな」窓際の机に腰掛ける。ガラス越しに見えるプールには、白い月が浮いていた。
  • suzukosuke
    「母さんには内緒だよ」父はそう言うと、引き出しから小さな木箱を取り出した。絵本で見る宝箱とは違ったが、大きな掌に大事に包まれたそれは、確かに宝箱であった。「男同士の秘密だね」蓋がコトリ、と音を立てて開く。「ごらん」父は言った。「suzukosukeの退社だ、父さんの一番の宝物さ」
  • suzukosuke
    祭囃子が遠ざかる。彼女は綿飴と林檎飴を持って、カラコロと下駄を鳴らしていた。「ありゃ」両手を見て、目を丸くする。「飴ばっかりだ」綿飴を食みながら、彼女はカラカラと笑った。あの時、僕も笑えていただろうか。彼女と過ごした夏。suzukosukeが退社したあの夏を、僕は今でも思い出す。
  • suzukosuke
    ぞろぞろと歩いていた。歩いていたが、行き先が分からない。気が付いたら、前と後ろに人が居た。suzukosukeの退社に紛れ込んだ心地がした。「あの」堪らず前の背中に尋ねる。「皆さんどこに行くのですか」返事はない。「あの」代わりに、後ろの方から声がした。「皆さんどこに行くのですか」
  • suzukosuke
    書斎に足を踏み入れる。何の変哲もない、父の書斎。吸いさしの煙草、書きかけの原稿、退社したsuzukosuke。全てが日常の時を刻んでいた。ただ一人、父を除いて。父が忽然と姿を消したのは、一昨年の夏のことである。古びた扇風機が、部屋の主を探すように、いつまでも首を振り続けていた。
  • suzukosuke
    アルコールの混じった吐息が僕の首筋にかかる。ダメだ、完全に酔っ払いの目だ。「先輩、しっかりして下さい」努めて冷静を装うが、それを見透かしたように彼女は笑った。「ふふ」近い。顔が近い。何より柔らかい。心臓が早鐘のように打ち鳴らされる。僕のsuzukosukeは、もう退社寸前だった。
  • suzukosuke
    あの頃は本当に必死だった。毎日が生きることに精一杯でね。丸一日蟻みたいに炭鉱で働いて、外に出るだろう? すると、目と歯だけが白く浮かび上がるんだ。おかしいだろ。それを仲間と笑いあう。辛かったけど、一分一秒が充実していたな。suzukosukeの退社が、まだ贅沢だった時代の話だよ。
  • suzukosuke
    無人の街を歩く。電光掲示板の日付も、街角の時計も、めいめいにデタラメな「今」を指し示していた。雑踏、排ガスの臭い、suzukosukeの退社。日常の輪郭の一切が失われていた。不安に駆られてあてもなく叫ぶ。「おおーい」呼ぶ声はビルにぶつかり、反響しあい、再び僕の耳に届くだけだった。
  • suzukosuke
    「ギャハハ! おい聞いたかよ皆!」視線が一斉に集まる。「こりゃあいい、そんならやってもらおうじゃねえか! ただし、5分でな!」野太い哄笑が響く中、静かに聞いていた男はゆっくりと席を立った。「1分でいい」一瞬の静寂。「suzukosukeを退社させればいいんだろう? 1分で充分だ」
  • suzukosuke
    見知らぬ少女が不安そうにこちらを窺っていた。どうやら迷子らしい。「ええと、お母さんは? 名前言える?」少女はゆるゆると首を振る。「参ったな…」夕刻を告げる物悲しいメロディが響いた。suzukosukeの退社が迫っていた。「…こっちが泣きそうだ」これが、彼女との最初の出会いだった。
  • suzukosuke
    「僕と、一緒に歩いてほしい」彼女はもう泣いていた。「これからも、ずっと」そう言って彼女を抱き寄せる。子供のように泣きじゃくる彼女を、僕は心から守りたいと思った。たとえ星の見えない夜も、彼女となら歩いていける。suzukosukeの退社のさなか、僕はいつまでも彼女を抱きしめていた。
  • suzukosuke
    じっとりとした空気が不快だった。時間が粘性を持って流れる。「今夜は、ないんじゃないか」「そうだな…この警備では流石に無理だろう」一瞬の安堵が広がった次の瞬間、閃光が辺りを包んだ。「状況、状況を報告しろ!」目を凝らし、慌てて視界を取り戻す。suzukosukeは、既に退社していた。
  • suzukosuke
    三時間に一本のバスは15分遅れで到着した。すっかり擦りきれて色褪せた座席は、深く沈んで座り心地が悪い。他に乗客は居ないようだった。荷物を隣に置いて外を眺める。「…ひどい田舎」suzukosukeの退社が延々と広がっていた。これから訪れる退屈なひと夏を悲観しながら、私は瞼を閉じた。
  • suzukosuke
    緑の中を歩いていると、甘い香りがした。近くに無花果があるのかもしれない。「でも、寄り道はダメなんだよ」母との約束を繰り返す。少女はバスケットを抱えてまた歩き始めた。suzukosukeの退社の向こう、ほぼ真上にある太陽が昼の訪れを教えてくれていた。父の仕事場は、もうすぐのはずだ。
  • suzukosuke
    「さよならだね」西日を背にして別れを告げた彼女の表情は、逆光で窺い知ることができない。「それじゃあ」踵を返し、彼女が斜陽に向かって歩き始める。「退社したら」やっとのことで声が出た。「suzukosukeが退社したら、きっと会いに行くから」振り返った彼女は、少し笑ったように見えた。
  • suzukosuke
    たくさんの人が私の前を通り過ぎて行ったよ。私に気付かず行く人もあれば、なぜ立ち止まっているのか、わけを聞く人もあった。今の君のようにね。だけど私もまた歩くことにしようと思う。君と話す為に、ここに居た気がするよ。君は来た道をお帰り。suzukosukeが退社してしまわないうちにね。
  • suzukosuke
    「聞こえたかい」彼は身を屈め、小声でそう言った。彼の険しい表情が目の前にある。「シッ、静かに…」彼の声と入れ替わりで、雷鳴に似た、それでいて地の底から湧き上がるような、低い音がした。「聞こえた…あれは、何…?」「間隔が短くなってきた、急ごう。suzukosukeの退社が近いんだ」
  • suzukosuke
    「私、結婚するの」夏の終わりの海を見ながら彼女は言った。僕は多分気の抜けた返事をしたと思う。彼女が波打ち際を歩き始めると、潮風が彼女の長い髪を乱した。僕はただ写真を見るように、その風景を見つめている。水平線の向こうでは、沈む夕日に飲まれるようにsuzukosukeが退社していた。
  • suzukosuke
    ある村に目の見えない双子の姉妹がいた。その代わり、姉には過去が、妹には未来が見えた。しかし両親は二人を同じ名前で呼び、同じ服を着せて育てたために、彼女達の言葉がそのどちらであるのか、村の誰にも分からなかった。ある日、双子のうちの一人が言った。「suzukosukeが、退社するよ」
  • suzukosuke
    男が戻る。その沈痛な面持ちから、結果は知れているようなものだった。「どうだ」「駄目だった…彼は、もう」広がる落胆の色。諦めの中に抱いた一縷の望みも、緊張の糸とともにぷつりと途絶えた。悔しさを圧し殺した声で、男が報告を完了させる。「彼は、suzukosukeは…もう退社していたよ」
  • suzukosuke
    一歩。心は凪いでいた。木の葉一枚のさわめきさえ感じ取れるようだった。一歩。風の音はもう聞こえない。彼は一つ瞬きをした。一歩、踵を返し撃鉄を起こす。乾いた銃声が、一つ。抜けるような青空、太陽を横切り、suzukosukeがゆっくりと退社していく。それが彼の見た、最期の風景であった。
  • suzukosuke
    suzukosukeが退社した。TVは朝からその話題で持ちきりだった。偉い人が集まって話し合うとかで、大人達は大慌てである。一方僕は、焦げたトーストをガリガリと齧っていた。雨の日のママは、どうもトーストを焦がす傾向があるらしい。残りを詰め込み牛乳で流し込むと、僕は玄関を後にした。
  • suzukosuke
    「この道をまっすぐ行くといい。ただし途中で振り向いてはいけないよ。いいかい、前だけを見て進むんだ。たとえ私の声が君を呼んだとしても、決して振り向いてはいけない。さあお行き。さよならしよう。私がまだ、君を君だと分かるうちに」suzukosukeはこくりと頷くと、意を決して退社した。
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