「侵略の定義は定まっていない」という詭弁について 《山崎雅弘》

表題に関連するツイートをまとめてみました。学者と呼ばれる人々が、特定の学問分野での「定義」を援用しつつ、一般的な社会問題についての「私見」をあたかも「絶対の正解」であるかのように断定的に語ると、その関連の予備知識を持たない人々はなんとなく「そうなのか」と納得してしまいがちですが、その「定義」は本当に正しいのか? それは問題全体の一部を研究する学問の枠内での「定義」なのか、それとも問題全体を言い表すことのできる普遍的な「定義」なのか? 日本政府が、国の未来をより良いものにするための反省材料として、自国が過去に始めた対外戦争を「侵略」と呼ぶことは間違っているのか? 「侵略」という言葉を使うべきでない、という意見は正しいのか? この問題をさまざまな角度から考える材料として、参考になれば幸いです。 続きを読む
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山崎 雅弘 @mas__yamazaki

歴史を見る目歪める「北岡発言」 埼玉大学名誉教授・長谷川三千子(産経)bit.ly/1BM7OI8 首相とその周辺による「侵略の定義は定まっていない」という論法で、戦中の日本による周辺諸国への侵略行為を正当化するレトリックの典型。もっともらしい詭弁を展開している。

2015-03-18 15:38:39
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

長谷川三千子氏は、侵略の定義として外交分野における「アグレッション」のみを取り上げ、戦勝国と敗戦国、つまり大国同士の関係性の中でのみ存在する概念であるかのように、受け手をミスリードしている。戦勝国にも侵略的行動があったのだから、敗戦国の侵略だけ問題視するのはおかしい、と誘導する。

2015-03-18 15:40:32
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

しかし現実には、軍事力を用いて他国の主権を侵害し、相手国の領土や資源を自国のものとする社会的現象を指す言葉として「インベージョン(Invasion)」があり、一般的に「侵略」の意味としてはこちらの方が多く用いられる。「アグレッション」だけで侵略を定義するのは、詭弁術に他ならない。

2015-03-18 15:41:58
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

「インベージョン」の使用例。英ガーディアン紙と英インデペンデント紙は、昨年3月の記事の見出しで、当時まだウクライナの支配下だった、クリミア半島に対するロシアの(「自警団」に擬装した)露骨な軍事的介入を「インベージョン」と表現していた。 pic.twitter.com/DRS5TxY0lx

2015-03-18 15:43:27
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山崎 雅弘 @mas__yamazaki

外交分野における「アグレッション」の議論は、主に「他国を侵略する能力のある大国間の問題」として行われるが、「インベージョン」は他国に「侵略される側の視点」も含んでいる。首相周辺は巧妙に、先の戦争における日本軍の侵略についての議論で後者の視点を排し、前者だけに限定しようとしている。

2015-03-18 15:44:29
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

侵略の定義として外交分野における「アグレッション」のみを取り上げ、「侵略」という概念の定義は実はあやふやで、戦中の日本にこれを適用するのは正しくない、という一見もっともらしい詭弁を展開する本は、書店にも多く並んでいる。そうした本はどれも「日本に侵略された側の視点」が欠落している。

2015-03-18 15:45:33
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

長谷川三千子「なぜなら『侵略戦争』という概念そのものが極めていい加減に成り立ったものであって、今に至るまできちんとした定義づけがなされたためしはないからなのです」「つまり、『侵略』という言葉は、戦争の勝者が敗者に対して自らの要求を正当化するために負わせる罪のレッテルとして登場し、

2015-03-18 15:47:00
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

(続き)今もその本質は変わっていないというわけなのです」この論理展開が示す通り、長谷川三千子氏の「侵略の定義」についての論考には、「日本に侵略された側の視点」が完全に欠落している。それどころか、「侵略」という言葉を使うことは「国際社会において、『法の支配』ではなく『力の支配』を肯

2015-03-18 15:48:06
山崎 雅弘 @mas__yamazaki

(続き)定し、国家の敵対関係をいつまでも継続させるような概念」であるから「決して使ってはならない」と論理をねじ曲げ、北岡伸一氏を「本来の学識者としての良識を発揮していただきたい」と侮辱している。詭弁に詭弁を重ねて日本の戦争責任回避を図る長谷川氏に「学識者としての良識」はあるのか。

2015-03-18 15:49:22