「科学は宗教です」はこの意味でしか「宗教」ではありません。

KAMON @KAMON_Yammani

鳥獣戯画展の待ち時間中に、togetterでまとめる予定の連twをしておこう。

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まず、科学クラスタでたまに出てくる「科学も宗教」という言説について。

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宗教という言葉がバズワード化しているので、「こういう意味でのみ、宗教ですよ」という言い方をする。

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端的に言えば、科学は、教条が存在するという一点においてのみ宗教である。

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宗教もその他の思想も、思考の前提・出発点と命題を持っている。論理学ではアクシオム(公理)という。人がものを考える上で、これがないということはありえない。

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例えばキリスト教なら｢神は存在する｣、仏教なら｢諸行無常｣などはその思想体系の大前提で、無条件で正しいものとみなす。これが否定された世界のことは考えない。

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科学にこれが存在するかというと、ある。｢自然の斉一性原理｣である。

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自然の斉一性原理とは、｢宇宙は誕生してから今まで、ずっと同じ法則で動いており、その法則は未来永劫変わらない｣というものである。

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例えば、ニュートンの運動方程式はF=maだが、これがF=tan maなんて滅茶苦茶な式になることは今後永久にないし、宇宙開闢以来なかっただろう。 三角形の面積も、明日になったら底辺かける高さわる3になっていた、なんてことはない。

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これらを我々は当たり前だと思っているが、実は証明できない。今現在の法則が一億年前も同じだったという保証はないのだ。

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自然の斉一性は、無条件に信じても今のところ不具合はない。しかし、証明できないので、｢自然は神様の気まぐれで如何様にでも変わるんだ！｣という考えを覆すことはできない(但し、それは向こうも同じ)。

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科学にも教条は存在し、それは「神は存在する」などと同様に証明不可能である(と思われる)ものである。では、「科学的に正しい」は、他の宗教に対する一般のイメージと同様に、信ずる者の頭の中にしか存在しないのだろうか？

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これについては科学哲学者の間でも論争があり、大きく「科学的実在論」と「反実在論」に分けられるらしい。 amazon.co.jp/%E7%A7%91%E5%A…　詳細はこの文献に譲る。

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科学といえどアクシオムを設定しなければならない以上、科学的手法による結論が「絶対に」正しいと結論することは難しい。しかし、科学は少なくとも「より信頼度を高めようという工夫」においては、他の宗教より優れているように見える。

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科学が信頼を高めるための工夫とは、「自らを疑い続ける」こと。そして、「自らの教条をなるべく減らそうとする」こと。この2点である。

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モーゼの十戒をまとめて三戒や二戒にしようという動きを私は寡聞にして知らないが(あったら教えて下さい)、科学はこれを長年やり続けている。科学のアクシオムは厳密に言うとあといくつかあるのだが、これを始めに言った「自然の斉一性」のみにするべく、世界中の科学者が努力している。

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そんなわけで、「科学は宗教です」という言明は、「科学に教条(ドグマ)は存在する」と言う意味においては正しいし、「科学だって絶対正しいとは限らない」も厳密にはそうである。しかし、「だから科学は私の提唱するナントカ思想と同列以下に扱っていい」とは言えない。

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注意：これは、他の宗教が信頼されるための工夫をしていない、ということではありません。宗教には布教が必要で、その過程で様々な工夫がされています。

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なお、他の宗教も自らを疑う動きはどこかで行っている。科学哲学でもよく引用される「神の存在証明」や「全能のパラドックス(神は"重すぎて自分にも持ち上げられない石"を持ち上げられるか)」は、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教の各神学者によるものである。

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そもそも、最初に説明した科学最後のドグマ「自然の斉一性」も、17世紀オランダの神学者・スピノザのものである。