CDBさんによる『マッドマックス 怒りのデスロード』解説
- tarareba722
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そんなわけで本日ようやく噂のマッドマックスを見てきたわけですが、「いくらなんでもそんな馬鹿な」と思ってたら本当にフェミニズムの映画でありながら(弱者)男性の映画であり、知性ある作り手による理屈抜きの娯楽映画という奇跡的作品でしたね。 twitter.com/C4Dbeginner/st…
2015-07-04 21:45:47マッドマックスまだ見てないんだけど「フェミニズムだ」「これぞ男の映画!」「作り手の知性を感じる」「理屈抜きのバカ映画だぜ!」といった矛盾した感想が「ヤバい」という一点で全員一致してるのが巨大怪獣の目撃者インタビューみたいで、彼らの感想自体が予告編プロローグを見てるような気分になる
2015-06-25 23:24:23マッドマックスってすさまじいばかりの要約と省略の映画で、それが故に猛烈なスピードの映画なんだよね。「近代化と民主化」という人類の歴史を400倍速でブン回すような映画。最初の脱出シーンなんて文字通り昔のカンフー映画的早送りでアクションが処理され圧倒的な速度で映像による説明が進んでく
2015-07-04 21:50:22ハリウッドの脚本力、演出力の進化がヤバい、っていうのは「ベイマックス」の時のはなびら葵氏のツイートがものすごく的確に指摘してたと思うんですけど、マッドマックスも明らかにその流れの中にある。もちろん監督も配給も全然違う映画なんだけど、明らかに「同じ文明圏が作った作品」という気がする
2015-07-04 21:54:31「映画における人文教養とは何か?」というと、別に登場人物が思想書やら文学の一節を引用してしゃべりまくることではなくて、「無教養な人間の行動をシュミレートできる」っていうことだと思う。マッドマックスはすべての教養が死に絶えた世界なんだけど、そこに生まれる情報と教養の必然を描いた映画
2015-07-04 21:58:26例えば押井守がマッドマックスを撮り直して「近代の終焉において呪術的強度が復活するのは必然ではないか?(ジョー)」とか「周縁への逃走は甘美だが何ももたらさない(マックス)」とか理屈を言わせたら20時間分くらいの理屈が詰まってる映画。逆にジョージ・ミラーが押井映画を撮ると5分で終わる
2015-07-04 22:03:59監督が「フェミニズムのための映画ではない」と発言したインタビューは見てないけど、そりゃそうだろと。フェミニズムのための映画ではなく、映画のためにフェミニズムが必要不可欠だった、リアリティの構築のためにフェミニストが呼ばれ、そしてそれが映画的に成功したって所が決定的な部分だと思う。
2015-07-04 22:10:52ベイマックスやマッドマックスを見ると、日本で役に立たないと言われ廃棄されようとしている人文教養がアメリカでは徹底的な実証と洗練を重ねて「科学」の領域に達しつつあることを見せつけられて愕然とする。教養はレーダーであり海底を探査するソナーであって、それは最新鋭の武器であり兵器なのに。
2015-07-04 22:16:55ハリウッドの恐ろしいところは「一度作った映画は何度でも同じレベルのものを作れる」ということ。それが科学。職人・宮崎駿がいなくなった後は、日本ではおそらく誰も「となりのトトロ」みたいなアニメを作れなくなるけど、ハリウッドは名作を分析し、蓄積し、再生産し、そして研究しさらに改良する。
2015-07-04 22:22:12例えばなぜ「理屈なしのバカ映画で最高!」っていう感想があるかというと、そういう風にも見れるように作ってあるから。イモータン・ジョーは音楽と麻薬と宗教で知性を麻痺させ社会を支配してるんだけど「こうして支配してるんだな」とも見れるし「この映画は知性が麻痺してるぜ!」と見ることもできる
2015-07-04 22:30:20ハリウッドというのは恐ろしい世界で、人文教養どころか下手したら英語の読み書きも怪しいようなレベルの大衆にも見てもらわないとショービジネスが成り立たない。で、「言語に頼らず映像で身体に教養と情報をブチ込むににはどうしたらいいか?」というテクノロジーを日夜先鋭化させてきたんだと思う
2015-07-04 22:35:01「ダークナイト」にしても「ウィンターソルジャー」にしても、批評家から高い支持を受けつつ、ポップコーンモリモリ食いながら「バットマンつええガハハ」って笑ってるアホなおっさんも楽しめるようになってる。裸の王様じゃないけど、見える人にだけ見える二重光学素材で映画を作ることに成功してる。
2015-07-04 22:40:41まあ「命の危険が迫る時に数歩引き返してまで外した貞操帯を蹴り上げる」なんていう明白な身体言語に「深い意味を読み取るな!」という意見が出るのなら、日常生活で周囲の人間が眉をひそめたり顔を背けたりしたくらいじゃあそこに自分に不都合な「深い意味」なんか読み取るわけがないよなと思ったり。
2015-07-04 22:44:57あの女の子たちが暮らしてた部屋ってたぶん数秒しか映らないんだけど、学校の椅子みたいなのが置いてあって城の中とはまったく文明圏がちがうんだよね。「はいこの中は『近代的自我』を育む失われた教育がありましたよ。わからへん人は置いていきますよ。義務教育やないからね」っていう映画なんですよ
2015-07-04 22:50:32ニュークスが最後に言う「俺を見ろ」って(witness me)って言ってるらしいんですけどね。これが社会学でいう「承認」にあたるかどうかは高卒なので解釈を控えますけども、今誰よりも赤木智弘先生に見て頂きたい映画です。どうせこじらせてるからビリギャル見に行って悪態つくんでしょうけど
2015-07-04 22:58:18ちなみに今日はもう一本映画を見て「グローリー/明日への行進」、こっちも素晴らしかったんですよ。原題は「selma」これ公民権運動にとって決定的な事件があった場所の名前なんですよね。キング牧師の活動を描いた映画なんですけどマッドマックスの影にかくれてお客さんがあまり入ってない
2015-07-04 23:04:11マッドマックスが近代化の歴史を早送りする映画だとしたら、グローリーは歴史の一瞬をスローモーションにして「その瞬間何が起きていたか」を描ききる映画。キング牧師も神聖化されないし、反差別運動はマルコムXみたいな暴力過激派とお行儀の良すぎるお勉強派に挟まれて常にきりもみ状態。
2015-07-04 23:06:28「黒人問題など存在しない。南部問題など存在しない。あるのは単にアメリカの問題である」「We shall overcome」で終わる有名な演説をクライマックスでするジョンソン大統領も決して好意的には描かれない。でも鼻持ちならない悪人ですら動かすがゆえに運動は本質的なのだという映画。
2015-07-04 23:11:18追記でマッドマックスとPCについて書くと「結局、作品の方向性が見られてるんだな」と思ったり。女性が虐待されるシーンもあるし、作中のほぼ全員が精神にせよ身体にせよ障害を抱えている。でも作品の意志(必ずしも作者でなく)がどちらの方向を向いてるかってのは意外と伝わるもんだなと思いました
2015-07-04 23:34:39あと「何言ってんだてめー、3分で食い終わる牛丼を5時間語り尽くしてこその押井守だろうが」というBOYーKENに対してはまったくの同意見です。あれば話し合う相違点。
2015-07-04 23:37:45