飛行機の安定性の話-ノーマル、無尾翼機、先尾翼機-

むつかしい(´;ω;`)
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ウチューじん・ささき @uchujin17

一次大戦後に極端な短胴とか無尾翼にすることで高速を狙った機体が作られたことは確かです。例えばこんなの、Simplex-Arnoux 1922(フランス)。結果?初飛行で墜落してパイロットを殺しました。shu-aero.com/AeroPhotos_Shu…

2015-07-28 16:05:56
ウチューじん・ささき @uchujin17

飛行機は風見鶏とヤジロベエを足したようなもので、全機揚力と全機重心が一致した一点でのみ安定し、そこを中心にして風上方向に首を振ります。揚力が重心より前に移動すれば機首上げ、後ろに移動すれば機首下げの力が発生します。

2015-07-28 16:15:27
ウチューじん・ささき @uchujin17

風見鶏効果は全機抗力中心が重心より後方にあるときにプラスになります。抗力中心が前進、あるいは重心が後退すると風見鶏効果はゼロに近づき、抗力中心が重心より前に出るとマイナスになります。

2015-07-28 16:18:19
ウチューじん・ささき @uchujin17

静安定性がマイナスというのは、僅かでも右に振れればどんどん右を向き、左に向けようとして中心線を少しでも左に逸れると今度はどんどん左を向くということで、人間技ではほぼ制御不可能になります。

2015-07-28 16:19:21
ウチューじん・ささき @uchujin17

なので通常型の飛行機は尾翼で負の揚力を発生させ、揚力中心≒抗力中心よりも重心を前方に出すことで静安定性をプラスに設計します。 pic.twitter.com/ODbvWtBqxo

2015-07-28 16:23:16
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ウチューじん・ささき @uchujin17

主翼は自重mgに加えて尾翼の負揚力(a2)を足した揚力を発生させなければならず、これは抵抗を増加させます。また尾翼を支える胴体構造は安定を保つため「だけ」に必要で、機体の浮揚には何も寄与しないドンガラです。なので短胴あるいは無尾翼にすれば高速化できると考えられたのですが…。

2015-07-28 16:25:28
ウチューじん・ささき @uchujin17

後部胴体と尾翼は必要悪というか、これを我慢することで様々なメリットを享受でき、逆にこれを無くすと様々なデメリットを抱え込んでしまいます。安定性が悪い割に運動性が上げにくい(縦舵のモーメントが稼げない)、燃料弾薬などの可変重量物を積めない、フラップを付けにくいなどなど。

2015-07-28 16:29:28
ウチューじん・ささき @uchujin17

無尾翼/全翼機の空力原理図。可変重量物(燃料、積荷、兵装)は基本的に重心横のライン上にしか積めません。重心から舵までの腕長が短いので舵の効く範囲が狭く、重心移動に対する許容量が小さいからです。 pic.twitter.com/NO97PtOgpI

2015-07-28 16:33:01
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ウチューじん・ささき @uchujin17

ついでに先尾翼機の空力原理図。先翼のトリム揚力が上向きなのでそのぶん主翼揚力を減らすことができ全機揚抗比が上がるのが特長ですが、重心が主翼前方になるので主翼に積荷を積みにくい問題があります。震電も主燃料タンクは操縦席床下です。 pic.twitter.com/DVOaG9LAtw

2015-07-28 16:40:12
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ウチューじん・ささき @uchujin17

通常機では胴体を伸ばすほど水平/垂直尾翼面積を小さくできる(後は重量と表面抵抗との取引)のですが、先尾翼機では先胴を延ばすと先翼は小さくできるかわりに(ただでさえ付け場所に困る)垂直尾翼を更に大きくしないと風見安定性が確保できない相克があり、落としどころは容易ではありません。

2015-07-28 16:46:06
ウチューじん・ささき @uchujin17

まぁ、創作作品の架空機に突っ込み入れるのも野暮というものですが、実在する/したヒコーキの多くが似たような形をしているのはそれなりの理由があるので、それをひっくり返すようなデザインに説得力を持たせるのはそれなりの(屁)理屈が要りますよ、という野暮話でした(´Д`)

2015-07-28 16:51:57