図書館での「分類」の意味と司書の専門性について。

海老名市立図書館の分類が悲惨なことになっている、というツイートを受けて、本来図書館の分類がどのように決定、運用されているか、という解説連投と関連ツイートをまとめました。
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参考まとめ:海老名市立図書館の分類がひどいことになっているらしい。

まとめ 海老名市立図書館に行ってみた 例の「TSUTAYA図書館」と呼ばれる海老名市立図書館が10月1日にリニューアルオープンしたらしいので早速行ってみました。 ちなみにスタバで買ったコーヒーとかを館内に持ち込めるのがウリらしいです。蔵書にこぼしたらどうするんでしょうか 135732 pv 4353 277 users 1718

図書館の分類ってどうなってるの?

IMAI Toshiyuki @imait

TSUTAYA図書館で、有川浩の『阪急電車』が、普通に考えたら小説のはずが鉄道に分類されてるというtweet。リプライを見ていくとNDCは排架場所が1箇所に決まるといってる人がいた。うん、分類ってそういうものだもの。で、続く twitter.com/myeonglisha/st…

2015-10-03 15:45:34
明希良 @myeonglisha

海老名のTSUTAYA図書館でCCCがやった分類が明らかにおかしいと話題なので軽く検索してみた。有川浩なんて有名な人の作品でもか! 阪急電車は小説(913.6)だよ!何で分類が『鉄道(恐らく680台)』になるのよwww pic.twitter.com/qqRFcDdyOI

2015-10-02 15:34:36
IMAI Toshiyuki @imait

NDCは排架場所が1箇所に決まるというのは確かにそうかも、なんだけれど(別に分けて排架してもよいとはいえ)、多様な分野にわたる内容を持った書籍の場合、それぞれのジャンルに応じたインデックスを与えて、それぞれの入り口から検索できるようにするわけよ。それこそが図書館員の仕事でもある。

2015-10-03 15:47:55
IMAI Toshiyuki @imait

例えば、『グレン・グールド 孤独のアリア』っつう本がある。これはピアニスト、グレン・グールドについての本であり、創作性の高いものだから、文学なり小説の分類にいれてもいいし、グールドの論評ないし伝記と判断して音楽の分類に入れてもいい。あとは図書館の性質と判断になるよね。

2015-10-03 15:50:07
IMAI Toshiyuki @imait

そうした前提から、『阪急電車』が分類「小説」ではなく、「趣味実用/鉄道/路線・駅」と分類することの妥当性を考えるのが筋であって、NDCの分類に基く排架の問題とするのは間違ってると思うわけよ。やっぱり、この本を「小説」以外に分類するのは、判断が間違ってるといわれてもしゃあなしだよ。

2015-10-03 15:52:23
IMAI Toshiyuki @imait

配架ではなく排架と書くのは、「排架」が図書館学における用語だからです。私が出版社のことを「出版者」と書くのも同様です。でもコピーライトをコピライトとは書かないな。一貫性がなくてよくない。

2015-10-03 15:54:09
IMAI Toshiyuki @imait

私が以前図書館で働いていた時は、一般書(専門図書館だったので、専門書と一般書で係がわかれている)の分類をしていたんだけど、新書のシリーズなどで専門分野に関係するものがあった場合、新書の棚に排架しつつ、専門書の棚にも別途排架されていた。縦割りなんだけど、これはありだよね。

2015-10-03 15:57:19
IMAI Toshiyuki @imait

本が入荷したら、まず最初に分類を行うんだけど、その際にはTRC(図書館流通センター)の分類を参考にしていた。その上で、各書籍の内容でもって、図書カードを増し刷り、それぞれに応じた分類を追加していってた。こうして適切にインデックスを作らないと、利用者に届かなくなるからね。

2015-10-03 16:00:00
IMAI Toshiyuki @imait

講談社とかは、奥付にNDC(日本十進分類)に基く分類が記載されてて親切なんだけど、あれは大抵無視したなあ。あんまり妥当とは思われなかったから。

2015-10-03 16:01:16
IMAI Toshiyuki @imait

いずれにしても、図書の分類というものは、その内容を適切に判断できるものがしないことには、あさっての、妥当性に欠けた分類になってしまうものであり、それが閉架であろうと開架であろうと、誤った分類に基いて排架されてしまったものは、利用者の利便には適さなくなってしまう。

2015-10-03 16:02:52
IMAI Toshiyuki @imait

そのために要求されるのが、整理を行う図書館員の見識であり、ゆえに本来なら、任される分野における専門知識が必要となるところである。欧米とかだと、ライブラリアンには、図書館学以外になにかしらの学位なりが要求されてなかったっけ? ゆえに欧州でライブラリアンはエリートなのよ。

2015-10-03 16:04:54
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

サブジェクト・ライブラリアン(専門主題に通じた司書)の育成が一時、日本でも話題なりましたね 〉RT

2015-10-03 17:06:48
IMAI Toshiyuki @imait

そう、まさしくそのとおりです。まずインデックスをつける「整理」担当の司書があり、そして検索をする「リファレンス」担当の司書がある。それらが機能してはじめて、それは「図書館」といえる施設になるのですから、それらが欠ける施設は、本があっても図書館じゃないです。 @gishigaku

2015-10-03 16:08:32
IMAI Toshiyuki @imait

「検索をする「リファレンス」担当の司書」と書いたのは、リファレンスという業務は、あくまでも利用者の求めに応じて適切な資料を提供するのが目的で、利用者に代わって「答」をみつける仕事ではないからです。ライブラリアンは資料を提示するも、自らの考察は示しません。

2015-10-03 16:10:38
IMAI Toshiyuki @imait

私は、専門分野においては修士号を修めていて、その上で終了後に図書館学の受講をし、司書の資格を得たのだけれど、最終時給は740円だったかな? そりゃやめるよな! というか、専門図書館において、これくらいの待遇しか得られないというのが、日本の図書館の現状であるわけですよ。

2015-10-03 16:15:12
IMAI Toshiyuki @imait

自分の働いていた図書館には、派遣の司書もいたのだけど、よくその人と一緒に、日本における図書館員及び図書館の評価の低さについて話していたよ。図書館なんて暇な司書が好きに本を読みながら時間を潰している、そんな場所だと思われている。それこそ誰でもできる仕事だと思われている。基本だよね。

2015-10-03 16:18:21
IMAI Toshiyuki @imait

「新しい分野だと項番がない」問題はどう対処するのかというと、その図書館における独自項番を設けたりする。項番がないのは新しい分野だけでなく、専門的すぎてそこまで一般に分類が求められない場合にも生じる。 twitter.com/imait/status/6…

2015-10-03 16:20:44
IMAI Toshiyuki @imait

@Ra_koyama @gishigaku NDCにももちろん問題がないわけでなく(新しい分野だと項番がないとか)、十進分類以外にも分類の方法はあるわけですけど、それでも広くNDCが使われてるのは、実際これが「ベター」だからに他なりませんものね。分類とか、ほんと簡単じゃないです。

2015-10-03 16:12:27
IMAI Toshiyuki @imait

図書館学には、メディアにおいてどのように図書館及び図書館員が描写されているかを調べる、そんな分野もあって、あまりに問題ある描写があった場合は、日本図書館協会から抗議がいったりして、場合によってはお蔵入り(再放送されなくなるとか)することもあるよ。

2015-10-03 16:22:31
IMAI Toshiyuki @imait

司書が暇を持て余している、そんな描写くらいだと問題ではあっても、またかあちきしょーめ、暇じゃねえよ! くらいですむんだけど、利用者の閲覧履歴を警察などに提供するような描写があった場合、まず確実に抗議がなされる。なぜなら、利用者の秘密を守ることは、図書館の大原則だから。

2015-10-03 16:23:47
IMAI Toshiyuki @imait

図書館における分類は、基準となる分類法、たいていはNDCに基くんだけど、NDCは版によって内容が変わるから、まずNDC第何版に基いて分類するかが決められているはず。途中で新版に変えても、所蔵している資料がアップデートされるわけではないから、仕方なくとも旧版を使い続けることは多い。

2015-10-03 16:32:12
IMAI Toshiyuki @imait

そうやって、一貫した分類基準にしたがって、蔵書すべてが、一貫性と妥当性を持った分類がなされていることが、図書館の基本であって、理想であるともいえる。ただ、ここで問題になるのが、新しい事物に項番が与えられていない問題。その場合、図書館独自の番号ではなく、新版から移植することが多い。

2015-10-03 16:34:02
IMAI Toshiyuki @imait

新版から移植するのは、独自分類よりもベターだからに他ならない。分類は、その館だけでなく、全国一律どの図書館でも同様に用いられている方法でもって行わている方が、当然利便性が高くなるからだ。ただ、新版にもない場合は、独自に項番を設けることもありうる。これは仕方ない。

2015-10-03 16:36:27
IMAI Toshiyuki @imait

入荷した本を分類し、排架場所を決めるのは、「整理」と呼ばれる業務なのだけど、整理担当が使っているNDCを見ると、新項目、独自項目をどうするかの書き込みがあちこちに見つけられることだろう。注ぎ足し注ぎ足しで育てられた秘伝のソースみたいなもので、これが館の特色になるのかも知れない。

2015-10-03 16:40:34