- shoshokaki02
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Wikipedia「ウマノアシガタ」にも書いたのですが、複数の辞書で「きんぽうげ」「うまのあしがた」の表記「毛茛(下部が「艮」)」を「毛莨(下部が「良」)」と誤っています。
2015-10-08 23:37:20『明鏡国語辞典』第2版の【第1刷】では「毛莨(下部が「良」)」と誤った表記ですが、【第4刷】では「毛茛(下部が「艮」)」と正しいものにしれっと修正されています。(第1刷、第3刷、第4刷、第5刷、第6刷を見て確認しました。)
2015-10-08 23:41:03あまりに多くの辞書や植物事典で誤って「毛莨(下部が「良」)」と書かれているのでいちいち記録していませんが、覚えているもので言うと、『学研現代新国語辞典』改訂第5版、『三省堂難読漢字辞典』、『図説 草木辞苑』などで「毛莨(下部が「良」)」となっています。
2015-10-08 23:52:25なぜ誤りか
なぜ、こんなに多くの辞書で書かれている「毛莨(下部が「良」)」が誤りかというと、中国明代に編まれた『本草綱目』(1596年)では「毛茛」で書かれており、「『茛』はトリカブトの苗を指す」とあります。『広雅』(227)には「茛、鉤吻也」とあります。
2015-10-09 00:13:47「鉤吻」も毒草で、現代中国語では「ゲルセミウム・エレガンス」を指すようです。つまり、「茛(下部が「艮」)」は何かしら毒草を指しているようです。しかし、「莨(下部が「良」)」にはそのような意味はなく、『大漢和辞典』を見ただけですが、「ちからぐさ(牛馬の食料)」「おおあわ」の意味です
2015-10-09 00:17:45また、日本では江戸時代に『本草綱目』の解説書(とはいえ独自の部分が多い)『本草綱目啓蒙』(1803)が出版されます。ここにも「毛茛(下部が「艮」)」と書かれています。
2015-10-09 00:27:04現代中国語でも「毛茛máogèn(下部が「艮」)」であり、「莨láng, làng, liáng(下部が「良」)」とは明らかに発音が異なります。
2015-10-09 00:29:49まとめると、①古くは「毛茛(下部が「艮」)」である。②「茛(下部が「艮」)」は毒草で、そこから名が付いたとあるが、「莨(下部が「良」)」に毒草の意味はない。③現代中国でも「毛茛(máogèn)」である。ということです。
2015-10-09 01:21:16いつから誤っているのか
しかし、日本では北原白秋『桐の花』(1913)で既に「毛莨(下部が「良」)」と誤って印刷されています。おそらく、①字形が似ている②「茛(下部が「艮」)」があまり使われない字であった③明治期に「莨(下部が「良」)」を「たばこ」と読み多く使われていた、ことが関係していると思われます。
2015-10-09 00:40:27いつから「毛茛」と書かれるか
これは「毛莨(下部が「良」)」が誤りかどうかと直接関係はないですが、『本草綱目啓蒙』(1803)では「毛茛 ムマノアシガタ コマノアシガタ」と書かれていたのですが、『日本植物名彙』(1884)では「キンポウゲ 毛茛」と書かれています。
2015-10-09 00:45:12つまり、『本草綱目啓蒙』で「毛茛(下部が「艮」)」が出現し、「ムマノアシガタ」と「毛茛」が結び付けられ、さらには、「ウマノアシガタ」と同じものを指していた「キンポウゲ」も「毛茛」と書かれるようになったのではないでしょうか。(間の時期の文献を見ていないのでスカスカの仮説です)
2015-10-09 00:52:21持ってる辞書は?
手持ちの辞書。完全に自分の誤字ですねぇ……(土下座) pic.twitter.com/B37emmHTEU
2015-10-07 21:16:53