コンビニバイトの鹿島さん

きっと処女に違いないさ
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洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

鹿島「いらっしゃいませぇ~! あら、いつも来てくれる斉藤さん、でしたっけ? 佐藤? あらやだ私ったら……ごめんなさいね、佐藤さん♥ それで、今日は何をお求めですか? いつものお煙草ですね、かしこまりました~。はい、どうぞ♥ あらやだ、佐藤さんの手、こんなに冷たくなってるぅ~」

2016-02-10 15:32:57
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「佐藤さん、鹿島の手で温かくなってくださいね♥ サービスです、お名前を間違えちゃったから♥ 頬も赤くなっちゃって、やっぱり相当寒いんですね、今日は♥ いつもご利用ありがとうございます♥ あっ、お手て握ってたら帰れませんよね♥ 失礼しました♥ はい、こちらレシートです♥」

2016-02-10 15:42:01
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「バイト、ですか? はい、私のシフトはもうすぐ終わりですね。17時までなんです、店長さんに短くしてもらっているんですよ。帰りですか? いつもは電車ですけど……えっ、佐藤さんのお車でついでに? うぅん、今日はお友達のお迎えがあるのでまた後日にお願いしてもいいですか♥ はい♥」

2016-02-10 15:47:14
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

僕は鹿島さんのアルバイトが終わるまで店の裏手で張り込んでいた。別のコンビニで買ったあったかぁ~い缶コーヒーを持って煙草を咥える。鹿島さんの甘く蕩けるようなボイスで「あったかぁ~い」と囁いて欲しい、なんてことを考えながら。1時間経って鹿島さんのバイトが終わった。

2016-02-10 15:56:46
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

お友達のお迎えがあると言っていたから、きっと鹿島さんに似て美人で穏やかなお姉さんが軽自動車でやってくるのだろうと僕は思っていた。考えてもみてほしいが、女子というのは小さい頃から群を作る生き物だ。「男は狼なのよ」なんて歌はもう時代遅れ、厳格なピラミッド制を敷く女子の群こそ狼だ。

2016-02-10 15:59:21
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

やつらは流行という遠吠えで仲間を確かめ、隙を見せようものなら一斉に嬲って引きずりおろす。鹿島さんは大学生になるまでそんな戦場の中で常に上位にい続けたであろう風格があった。気遣いが上手く、誰にでも平等に接する人だ。裏表のない純真さこそがそのカーストを守ってきたのだと思う。

2016-02-10 16:01:07
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

コンビニの裏手から鹿島さんが出てきた。駐車場に向かって小さくスキップしながら 向かう鹿島さん。誰も見ていない場所でもああいう可愛い行動ができる天然さが素晴らしい。僕はその後をこっそりつける。やがて、鹿島さんはいけてるスポーツカーの前で立ち止まって窓をこんこんと叩いた。

2016-02-10 16:03:11
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

中から出てきたのはスポーツカーが似合うお姉さん、ではなく、スーツを着たそれなりにイケメンの爽やかな男だった。 考えてみれば当たり前だ。鹿島さんほどの美人に彼氏がいない訳がない。爽やかなイケメンで、スポーツカーが買える程のお金持ち、年齢も十分若く、恐らく性格もいいはずだ。

2016-02-10 16:07:31
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

スクールカーストの最上位に君臨していたに違いない鹿島さんの彼氏。王族は王族と恋をする。庶民は庶民、貧民は貧民、イケメンはやはり美女、そそて僕のようなキモオタは相手すら見つからない場合も多い。映画とは違う。現実にシンデレラは起こらない。

2016-02-10 16:09:31
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

経験上、スクールカーストの本当にてっぺんにいる奴というのはいいやつであることが多い。映画なんかでは嫌な奴もいるが、あれは監督が僕みたいなオタクだから偏見で描いているだけだ。カースト上位の運動部でマッチョな奴らやチャラい奴がたとえ嫌な奴でも、ああいう爽やかなイケメンは違う。

2016-02-10 16:11:19
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

人生に前向きで信じられないほどポジティブ。何をやっても上手くいくし、他者に偏見がなく手を差し伸べてくる。それも打算なしに。勝てる要素どころか責められるポイントもない。鹿島さんは幸せ者だ。これでいい。僕の汚くて狭い中古車に乗るよりもその10倍以上の値段がするスポーツカーに乗る女だ。

2016-02-10 16:12:53
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

グシャリ、と音がした。心では分かっていても、やはり僕は悔しかったのだ。手を温めていた缶コーヒーを思わず握り潰していて、僕の手は噴き出たコーヒーで染まっていた。自分がスチール缶を潰す握力を秘めていたことは驚きだが、惨めさが際立ってしまい、思わず涙がこぼれた。

2016-02-10 16:14:57
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

鹿島さんはスポーツカーに乗り込むと彼氏と一緒に海岸を通る道の方へと消えていった。これから夜の横浜にでも行くのだろうか。冬の海の寂しさも恋人と一緒ならロマンチックになるだろう。反対側、すぐそこにある繁華街に車を走らせラブホテルなんかの地下駐車場へ行かなかった事が唯一の救いだった。

2016-02-10 16:17:59
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

気が付くと、咥え煙草の火が消えていた。否、最初からちゃんと点いていなかったのだ。僕が吸っていた煙草のような空気は、その実ただの薄汚れた排気ガスだった。僕は排気ガスのように迷惑な存在でしかないのだとか、文字通り廃棄されるべきだとか、そう言ったことだけが思い浮かんだ。

2016-02-10 16:19:59
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

その日、家に帰った僕は、ツイッターに「行きつけのコンビニでバイトの美人に彼氏がいたwパコってるんやろなw」みたいなことをいつも以上に草を生やして10ツイート位してから、鹿島さんから渡されたレシートでチンコを握って3回抜いた。鹿島さんに手を握られたあの感触をオカズにして。

2016-02-10 16:22:57
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

鹿島さんに彼氏がいたことが発覚してから、僕はあのコンビニに行けなかった。だが、1週間も経つと、心の傷痕は薄れてしまい、鳥頭の僕は何の気なしにいつも通りに、鹿島さんのコンビニへ帰ってきてしまった。 「いらっしゃいませぇ~……あら、佐藤さん? 佐藤さん! お久しぶりです~」

2016-02-10 16:28:01
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

鹿島さんはレジにいた。店内にお客は見当たらなかったが、僕は鹿島さんに呼ばれたことを無性に恥ずかしいと思った。 「お名前ちゃんと覚えましたから♥」 「そ、そうっすね……」 僕は店内を一周しながら鹿島さんの視線を避ける。ニコニコと楽しそうに笑う鹿島さんは天使だ。やっぱり天使だった。

2016-02-10 16:30:19
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

僕は勘違いをしていた。あれだけイケメンでいい奴っぽい彼氏なら鹿島さんを幸せにしてくれるだろう。少なくとも僕よりは確実に。そうだ、鹿島さんの笑顔を護ってくれるスポーツカー(フェラーリだったら馬的に完璧だったが違った)に乗った騎士だ、あいつは。名も知らぬイケメン、鹿島さんは任せたぞ!

2016-02-10 16:33:30
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

心の中で踏ん切りのついた僕は店内を一周して成人向け雑誌とチーズケーキとコーヒーを買うことにした。今夜は盛大なパーティーになりそうだ。レジへ行くと鹿島さんが僕に微笑んでくれる。 「お煙草は今日はどうされますか♥」 「ひゃっ、はぃ……いつもの、で」声が裏返ってしまった。

2016-02-10 16:37:07
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「かしこまりました♥」 鹿島さんは煙草を出してきてバーコードを読み取る。続いて、コーヒー、チーズケーキ。 「えっと、こちら……」 最後に裏向きに置いた成人向け雑誌を手に取ると、どういうわけか表紙の方を見た。もちろんそっちにバーコードは存在しない。 「あっ、えっとぉ……」

2016-02-10 16:39:56
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

鹿島さんの可愛い顔がみるみる赤くなっていく。本来、僕はいつも別の店でその手の本を買うのだが、今日はさっぱりした気分になったせいで浮かれ、鹿島さんがレジにいることをすっかり忘れていた。その上、鹿島さんはどうやら成人向けのイラストを見るのに慣れていないらしい。

2016-02-10 16:42:01
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

棚出しはどうしているのか。変態オヤジがわざと表紙を表にして買ったりしないのだろうか。疑問はいくつもあるが、鹿島さんが本気でパニックになっているので、僕はバーコードの位置を教えてあげた。 「し、失礼しました……うぅ……」 落ち込んだ鹿島さんも可愛かった。

2016-02-10 16:43:40
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「……佐藤さんも、こういう雑誌、読むんですね」 鹿島さんは小さな声でそんなことを言った。 「鹿島さんのようにお相手がいないので……」 僕にしては思い切った発言だったと思う。それは考える間もなく口から出たセリフであり、言うならば心の声であった。言ってから、しまったと思ったがもう遅い

2016-02-10 16:45:25
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「お相手って……」 鹿島さんは微妙な表情を浮かべた。僕の口は止まらない。 「スポーツカーに乗ったかっこいい人ですよ。いやぁ、幸せそうで羨ましいです」 僕ってこんなに皮肉屋だったのかと自分でも驚きだ。鹿島さんは口をとがらせて反論する。 「あれは弟ですよぉ~」 嘘だ!

2016-02-10 16:52:46
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「嘘つかなくってもいいですって。分かってますから」 「嘘じゃないですよぉ。あれは弟の直くんです。写真だってありますし、えっと、とにかくそういうのじゃありませんから!」 鹿島さんの否定の仕方は必死というよりは怒っている感じだった。まさか本当に鹿島さんの弟さん、なのだろうか。

2016-02-10 16:55:27
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