「日本人」でも被害者となり得るレイシズム

東京女子大へ「差別とは何だろうか」という題で出講した梁英聖氏(@rysyrys)が、出席者の感想の中で(自分が日本人なのに)「お前ら、チョンだろ!」ろしつこく罵声を浴びせられた例を枕に、たとえ「日本人」であろうとも「人種化」による不平等→人権侵害からレイシズムの被害者となる可能性はある、と指摘するTL。
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梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

ARIC代表。一橋大学言語社会研究科でレイシズム研究。11月に新刊『レイシズムとは何か』ちくま新書hanmoto.com/bd/isbn/978448…。既刊『日本型ヘイトスピーチとは何か』影書房等。いいね・RTは賛同と限らず。サブ→@RyangYongSong

note.mu/ryangyongsong

梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

今日の東京女子大学での授業ではタイトルを「差別とは何だろうか――ヘイトスピーチから反レイシズムという「共通言語」の必要性を考える」とさせていただいた。ヘイトスピーチがもたらす若い在日への被害実態を紹介しつつ、それが当事者にとってどれほど「言葉にならないのか」をお話しするつもりだ。

2016-06-24 09:49:54
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

ヘイトスピーチが大きな社会問題となってようやく(一部の人びとが)「被害」に関心を向け始めたのはよいことだと思う。だが被害者から「被害」が語られるとき、せめてその言葉がきわめて多くの制約のなかで発されていることを考慮できなければ、その「被害」の社会的な意味も理解されないだろう。

2016-06-24 09:55:35
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

私見では日本社会には在日コリアンへの差別を語る最低限の「共通言語」が少なくとも三つ欠如している。①基本的人権、②反レイシズム(反差別)、③反歴史否定(反歴史修正主義)。これらの社会的規範はマイノリティとマジョリティの間の初歩的な「共通言語」。

2016-06-24 09:58:56
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

たとえば①基本的人権という規範がほぼゼロなのは、政治家が煽動する生活保護バッシングに誰も何もいわず、むしろ唱和することに現れている。そういう状況で貧困状態に置かれている人が、自分の「被害」(人権侵害状況)を言葉にできるのだろうか?人権規範は人権を語る社会の「共通言語」なのだ。

2016-06-24 10:02:43
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

人権規範はマジョリティとマイノリティの間の「共通言語」でもある。先の貧困の例でたとえれば、貧困でない人々の間にこそ「貧困は人権侵害」という認識が一般化すればするほど、貧困状況にある当事者が貧困を「人権侵害」として語ることはやりやすくなるだろう(そうでないからこそ余計に語れない)。

2016-06-24 10:09:29
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

ヘイトスピーチがこれほど大きな社会問題となった以上、その被害から社会は以前のように目を背けづらくなった。だが、だからこそ、日本に差別を語る三つの「共通言語」としての①人権、②反レイシズム、③反歴史否定がゼロ状態にあることを「見える」化することが重要になる。

2016-06-24 10:12:27
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

差別を語るうえで欠かせない三つの「共通言語(①人権・②反レイシズム・③反歴史否定)がゼロ状態にある、ということを、ヘイトスピーチを語る上で(説明は後回しにするがとにかくあるという意味での)「前提事項」にしていったほうがよいと思う。

2016-06-24 10:15:29
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

昨日の東京女子大学の授業で約50名の前で、在日の若者へのヘイトスピーチ被害や当事者にとって差別被害はどれほど言葉にならないのかについて個人的体験を交えてお話しした。当日の質問にも驚いたが、びっしり書かれた感想を読んで考え込んでいる。差別を受けた(あるいは見た)学生があまりに多い。

2016-06-25 22:55:48
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

路上で友達とおしゃべりしてたとき初老の男性から注意され「スミマセン」と謝っても、追及をやめないその人は途中から「お前ら、チョンだろ!」と言って朝鮮人はだからうるさい等とずっと叱責され続けた。本人は日本人で「違う」といっても聞かず、ただ怖かったという。その後男性は名刺を渡した。

2016-06-25 23:24:07
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

「おれ、こういう活動やっている」といいながらその男性は自分がハラスメントした女性に名刺を渡したという。「たぶん、そういう活動していると思います」(授業はヘイトスピーチを扱っていたのでヘイト活動だろう)とのこと。その体験を教えてくれた学生は話す間中、たまらなく不快そうであった。

2016-06-25 23:26:20
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

何の根拠もなく気に食わない相手を「在日」だとか「中国人」だとか攻撃しやすいマイノリティのラベルを貼り付けて罵倒する差別は珍しくない。今回私が驚いたのはその内容ではなく、授業した後にそういうことを学生さんが教えてくれるほど、その種のタイプが蔓延しつつあることを感じさせたからだ。

2016-06-25 23:30:33
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

この事例は日本のレイシズムを考える上で大変重要である。まず第一に、強調すべきはこれはレイシズムだという事。民族的マイノリティでなくとも、日本人が被害者であったとしてもレイシズムはレイシズムだということ。「在日」だとか「中国人」とか「反日日本人」などと相手を「人種化」しているから。

2016-06-25 23:38:04
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

これはヘイトスピーチ解消法直前に裁判で勝利して、重要性のわりに話題にならなかった、ザイトクによる徳島県日教組襲撃事件と同じだ。判決ではasahi.com/articles/ASJ4P… 「「人種差別的思想の現れ」で在日朝鮮人への支援の萎縮を狙ったと判断」されたことは決定的に重要。

2016-06-25 23:42:10
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

日本人が在日コリアンを暴行しただけでは単に刑事事件になるだけでレイシズムにならない可能性があるのと同じく、日本人が日本人を暴行してもレイシズムになる可能性がある。問題は①人種/民族的出自にまつわる(と思われる)グループへの②不平等(人権侵害)という要素。これが社会を破壊する。

2016-06-25 23:44:34
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

そういう意味で被害に遭った(単に罵倒されストーカーされているだけで暴力だ)学生さんは、日本人ではあるがレイシズムの被害者だと言ってよいと思う。そういうことを可視化し言語化するのは非常に重要だと痛感させられた。この意味でレイシズムはマイノリティに害を及ぼすだけでなく社会を破壊する。

2016-06-25 23:47:03
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

まだある。この事例は社会的に立場の弱い若い女性だからこそ強気に出れる、根性のない日本のレイシストの本質をよく現している。さらにセクシズムとレイシズムが極めて深いところでつながっていることをも現しているだけに大変象徴的だ。

2016-06-25 23:48:03
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

だがこういう事例は氷山の一角だろう。路上のヘイトスピーチは「デモ」なので目立つし犯人自ら動画をアップすることで嫌でも記録が残る。だが個々のこのようなレイシズム事件は本人がレイシズムだと思えなければ流れてしまうし、誰か周りが止めなければ止まらないし、記録しなければ「なかったこと」に

2016-06-25 23:49:53
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

まだある。今日感想を読ませて頂いてさらに驚いたのは、ペーパーにびっしりと感想が詰め込まれていたこと、そしてそのなかの少なくない感想に被差別経験(間接も含め)が記されていたことだ。なかには高校までの学校の中で教員が民族的マイノリティの学生を差別していたことさえあった。

2016-06-25 23:54:43
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

まだあるがもうやめておこう(言葉にする時間がない)。昨日本当に学生さんから学ばされたことが多かった。その一つだけ備忘録。今まで学生にお話しする時に分析的なことが多かったが、今回がらっと変えて差別を語る「共通言語」の欠如(①人権、②反レイシズム、③反歴史否定)をメインにした。

2016-06-25 23:57:08
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

これまで学生さんに話してきた中で、もしかしたら今回が一番学生さんのなかから身近な被差別経験(間接的なものも含め)を教えてくれることが多かったように思われる。なぜか。三つの要因が考えられる。第一はテーマと構成の変更。だがそれは主要ではない。第二は学生が女子大の女子学生だったこと。

2016-06-25 23:59:49
梁英聖@『レイシズムとは何か』(ちくま新書11月7日発売) @rysyrys

(もちろんこれは自分の推測に過ぎません)第三の要因は学生自身だ。学生さんが身近な被差別経験(間接的なものも含め)を語る(語るというより、もしかしたら「ひょっとして差別かも?」という声を発する)ことその行為じたいが、差別を可視化する「共通言語」の芽・触媒となったと思う。

2016-06-26 00:04:03