小型ロボットが爆速で迷路をかけ抜ける!「マイクロマウス競技」大会11年連続参加者に魅力を聞いた
Twitterユーザーのコヒロ(@Savant013)さんが投稿した、謎の小型ロボットの動画が注目を集めている。
動画は、パソコンのマウスのような形をしたロボットが、迷路のコースを爆速で駆け抜けるというもの。
ようやく課題迷路をクリアした。これで寝れる…お休みなさい…… https://t.co/QmXK4bhDw3
— コヒロ (@Savant013) 2022年1月30日
マウスはスタート地点から目にもとまらぬ速さで走りだし、複雑なコースの上を滑らかに方向転換しながら一気にゴールまでたどり着く。そして、来た道をまた同じ速度で戻っていくのだ。
片道にかかる時間はわずか14秒ほど。その間マウスは道に迷うことも壁にぶつかることもなく、「中にちっちゃい人間乗ってる?」と思うほど正確にコースを完走する。
動画は2.8万いいね!を超える反響を呼び、見た人からは「思ったより10倍くらい速かった」「早送りを疑いたくなるレベル」と感嘆する声が寄せられている。
こちら「マイクロマウス」というロボット競技のために開発されたもの。筆者は世にそんな競技があることをつゆ知らなかった。詳細が気になったので、コヒロさんに大会に参加するようになったきっかけや開発のこだわりを聞いてみた。
マイクロマウスは30年以上続く歴史ある競技
マイクロマウス競技とは、参加者が作ったマイクロマウスに迷路を走らせて、ゴールに到達するまでのタイムを競うロボコンの一種。
競技自体は1977年に米国で生まれ、日本では1980年に開催された「全日本マイクロマウス大会」が、日本で行われた最初のロボコンとされている。
競技に使われるマイクロマウスは、迷路の最短ルートを学習させ、そのデータを元に走らせる仕組みだ。
マイクロマウス開発を始めたきっかけを教えてください
大学でマイクロマウスを製作するサークルに入部したことがきっかけです。
小さい頃からモノづくりが好きだった私は、新歓でデモ走行をしているマイクロマウスを見て一目惚れし、本サークルに入部しました。大学卒業後も製作を続け、毎年開催される全日本大会も今年で11年目の出場となります。
マイクロマウスの大会は、数種類の競技に分かれており、コヒロさんは「マイクロマウス(旧ハーフサイズ)競技」に出場する予定とのこと。
出張中の土日はどうやって過ごすか人それぞれだと思う。先輩方は家族の元へ帰り、後輩達はレンタカーで観光に行くと言う。では私はというとホテルに篭ってマウス開発です。 https://t.co/w2NQoNpErp
— コヒロ (@Savant013) 2021年12月4日
マイクロマウスの大会に出場するまでどんな準備をするのでしょうか
マイクロマウスは開催当時からほとんどルールが変わっておらず、毎年同じ時期に全日本大会が開催されているため、基本的には全国大会が終わった直後から次の大会に向けて準備を始めます。
全国大会以外でも、各地方で大会が開催されているため、私の場合は全日本大会が終わってから半年ほどかけて新しいロボットを完成させ、各地方大会を行脚しながらロボットをブラッシュアップし、次の全日本大会に挑むというルーチンを繰り返しています。
ちなみに、マイクロマウス競技のコースの大きさは、9cm×9cmを”1区画”として、それが縦横何個分配置されているかで表す。Twitterに投稿された動画は、大きな迷路を持っているコヒロさんの友人宅にて撮影されたものだという。
あの動画は大きい迷路(32x10)を持つ友人の家にマイクロマウスを走行させに行ったときに撮影したものです。
私の自宅には小さいもの(9x9)しかないので、大きくて難しい迷路を前に我慢することができず、徹夜してまで走行させていました。
大会本番では32x32という、動画の迷路の倍以上ある迷路を走らせることになります。
投稿した動画に大きな反響があった感想を教えてください
嬉しい気持ち半分恥ずかしい気持ち半分といったところです。
私はマイクロマウスの走行デモに一目惚れしてマイクロマウスを作りたいと思ったので、この動画が多く人の目に触れ、誰かが新たにマイクロマウスを作りたいと思ってもられえば幸いです。
開発者視点で見た、動画だけでは伝えれない「実はここが凄いんです!」というこだわりポイントについても聞いてみた。
マイクロマウスの最近の流行りでもあるのですが、このロボットには「吸引ファン」という機構が搭載されています。これはロボットと地面との間の空気を吸い込んで圧力を下げ、強制的にダウンフォース※を発生させるものです。
発生させたダウンフォースによりタイヤのグリップ力が増えたおかげで、通常ではありえないほどの速度でカーブを曲がることができるようになります。
動画中でもロボットが走行している間に掃除機みたいな吸引音がしていると思うのですが、それが吸引ファンによるものです。
※ダウンフォース…車体が走行する時に生まれる空気の流れによって発生する、車体を地面に押し付ける力のこと
最後に、大会に向けた意気込みをひと言どうぞ!
モノづくりもスポーツと同じく最後は自分との戦いだと思っています。
大会までの残りの時間、皆さんに頂いたいいねやリツイートをモチベーションに、去年の自分を超えられる走行ができるよう、最後の追い込みを掛けたいと思います。
コヒロさんの熱い話を受けて、過去に開催されたマイクロマウスの大会はどんな感じだったのだろうとYouTubeなどで調べてみた。過去と現在を比べると、マイクロマウスの技術が30年でいかに進歩したかがはっきりわかり、さらに驚きが増す。
1980年代に開催された大会の様子↓
2008年の様子↓
マイクロマウスの大会は、中高生から参加する人がいるほど、幅広く門戸を開いている。コヒロさんの動画をきっかけに興味を持った人は、ぜひ詳しく調べてみては。
【第42回全日本マイクロマウス大会の開催概要はこちら】
開催時期: 2022年3月12日(土)
開催場所: 国際ロボット展2022会場内、東京ビッグサイト西展示ホール4
主催団体: 公益財団法人ニューテクノロジー振興財団