あの「生きた化石」が泳いでるっ!撮影に成功した当時の状況と想いについて話を聞いた

純粋な生物愛があるからこそ素敵な映像が撮れたんですね。
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Twitterユーザーのかずたそカンパニーさん(@kazutasocompany)が投稿した、ある希少生物が泳ぐ動画が話題になっている。

その希少生物とは、国の特定天然記念物に指定されている「オオサンショウウオ」。約3000年前の化石と今の姿がほとんど変わっていないことから「生きた化石」とも呼ばれている。

現在日本には、特定天然記念物である「オオサンショウウオ」の他、外来種である「チュウゴクオオサンショウウオ」、そのハイブリッドの「交雑種」が生息しているとされ、撮影された「オオサンショウウオ」が、どの種に該当するのか見た目から判断は難しいが、いずれにせよ希少であることは間違いない。

ましてや、夜行性であるオオサンショウウオが日中に泳ぐ姿を撮影したとなれば、専門家でも驚くレベルと言えるかもしれない。

カメラ前を悠々と泳ぎ去るオオサンショウウオ
カメラ前を悠々と泳ぎ去るオオサンショウウオ

透き通る水の中を悠々と泳ぐ姿を見たTwitterユーザーからは、「すげー!本物だ!」「この余裕と風格、絶対神様だ!」「泳いでるのはじめて見た!」というオオサンショウウオへのコメントとともに、「川が美しすぎる!」と、川の透明度に驚く声も多く寄せられている。

日頃から、生物の自然な姿を見るため野外観察に行くというかずたそカンパニーさん。今回、貴重な撮影に成功した当時の状況を伺ってみた。

目の前を過ぎ去る瞬間は圧倒されて…

オオサンショウウオを発見したときの状況を教えてください

その日は早朝から、水生生物を探して川縁を歩いていました。午前7時ごろに川を下る大型の生物が現れたので、急いで手元にあった防水カメラの録画ボタンを押して、水中に浸けました。

オオサンショウウオだと気づいたとき、どう思いましたか?

日中に自然のオオサンショウウオを見る機会は以前に何度かありましたが、水中を移動するオオサンショウウオを見たのは今回が初めてのことです。

悠々と泳ぐその姿は、映像で見ると可愛らしく思いますが、目の前を過ぎ去る瞬間は圧倒されて、動くことができませんでした。しかし、動かなかったことが結果的に今回の素敵な動画の撮影につながったのだと思います。

まわりの方の反応はいかがでしたか?

Twitterに投稿した後、近しい友人から「とにかく可愛い!」などの感想が多数送られてきました。

もともと生物がお好きなのですか?

動物は全般に好きですが、特に両生爬虫類が好きです。しばしば彼らの自然な姿を求めて、カメラを持って野外観察に行くことがあります。

これまでにも珍しい生物を発見したり、撮影したことはありますか?

動物の映像はよく撮影しますが、今回のような衝撃的な映像の撮影ははじめてのことです。より多くの人がこの映像でオオサンショウウオの魅力に触れ、この生き物の生態について自分で調べるきっかけになれば幸いです。

京都の鴨川など、いくつかの水系にいるオオサンショウウオの個体群のほとんどは交雑種で、遺伝子汚染が進んでいることがわかっているというショッキングなニュースがありました。

「オオサンショウウオ在来種ピンチ! 各地で広がる日中交雑種」(中日新聞、2021/10/8)

しかし、まだ日本には遺伝子汚染がない地域が多くあることもまた事実です。今回撮影された場所は上記のような遺伝子汚染が進んでいることがわかっている地域ではなかったことから、この個体は日本在来のオオサンショウウオである可能性が高いと私は考えています(もっともDNA鑑定をしなければ確実なことは言えませんが)。

現在、研究機関や行政をはじめとした多くの方が在来のオオサンショウウオを保全するために奮闘しています。彼らの活動がより多くの人に周知され、少しでも事態が改善されることを切に願っています。

自然豊かな清流に棲むオオサンショウウオ。この機会に、一人ひとりが自然との向き合い方を改めて考え、人間と生物たちが心地よく共存できる世界をめざしていきたい。

かずたそカンパニーさんは、動物(主にカエル)の魅力を自分なりに表現して、動物が身近に感じられるようにとフィギュアづくりも行っている。Twitterインスタグラムで発信しているので、興味のある人はぜひのぞいてみては。

記事中の画像付きツイートは許諾を得て使用しています。