世界一臭い食材「シュールストレミング」を何が何でも美味しく食べるぞチャレンジ

プロのシェフにちゃんと食べ方を教わってきましたよ
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人生の実績解除を求めて集まった者たち

シュールストレミングの開缶会&試食会を行うので、撮影協力者を募ります

と社内のスタッフやTogetterオリジナル記事ライター陣に呼び掛けたところ、びっくりするくらい誰も乗ってこなかった。

ある程度予想はしていたが、これでは困る。先のイベントで仕入れた情報によると、今回買ったシュールストレミングは一缶を10人くらいで食べる想定の量らしいので、かなり人を集める必要があるのだ。

今回はあくまでシュールストレミングを美味しく食べるための企画であること、取材でちゃんとした調理法を教わってきたことをしつこく訴求した。結果、「シュールストレミング実食の実績解除※するかぁ…」と徐々に物好きたちが網にかかり始め、なんとか7人の参加者を集めることができた。

※ゲーム用語で、特定の目標を達成した時などに使う

まんまと集まった皆さん

あたりは「あの臭い」に包まれた

まずは最初のステップにして最難関の開缶から。

今回、開封にあたって周囲の皆様からご心配を受けることを避けるため、圧倒的ディスタンスを確保できる広い敷地の公園を選んだ。

シュールストレミングは缶の中でも発酵を続けているため、開け方によっては中の液体が噴出する可能性がある。この汁が一滴でも服などにつこうものなら、その服とはもうサヨナラしなければならないというから恐ろしい。

そのため、初心者は水中もしくは流水にあてながら開缶するとベター。

雨合羽+ビニール手袋でさらに防御力を高め、水を張った風呂桶の中に缶を沈める。

心臓バックバク

「いくぞーいくぞー!!!えいやっ!!!」

と缶切りを突き立ててみたものの、缶がけっこう固くて刺さらない。弱腰ではだめで、思い切って力をこめないといけないようだ。

悪戦苦闘しつつも缶に最初の一撃が入り、空いた穴から濁った液体が勢いよく噴出する。

それと同時に、水の中からアンモニアのような臭いが漂ってくる。

その様子を遠巻きに眺めていた参加者からも

「あーっ、確かに臭うわ!!!」

とざわめきが広がった。

液の噴出が止まった段階でいったん感を水から取り出し、キコキコと開けていく。

必死の形相

無事開缶できた。缶の周り一帯が、鼻にまとわりつく不快な臭いで包まれた。がしかし。

「あれ、意外と大丈夫かも???」

そうなのだ。確かに臭いが、「耐えがたく度し難い悪臭」というほどではないのだ。

「世界一臭い」「くさやの○○倍」みたいな強烈な言葉とともに紹介されることが多いからもっとこう、大変な臭いを覚悟していたが、まぁ普通に耐えられる。

至近距離でのスメリングに挑むライター・たかや氏

気になる臭いはというと。参加者の言葉を借りて例えるなら

「駅の公衆トイレの横を通った時の臭いにそっくり」

である。およそ食品に対して使う比喩ではないことは重々承知の上だが、本当にそっくりなんだから仕方ない。その証拠に、缶を開けた瞬間どこからともなく大量のハエが飛んできて、缶の周りにちょっかいを出してくる。やはりトイレの臭いなのだ。

ともあれ、無事死傷者を出すことなく開缶できたので、調理に進む。

北欧の蒸留酒で臭いを軽減

事前に調べた情報によると、シュールストレミングの下処理として、臭いを抑えるために「アクアビット」というお酒で身をゆすぐ方法があるらしい。アクアビットはジャガイモが原料の蒸留酒で、スウェーデンをはじめ北欧諸国で製造されている。

聞いたことないお酒だなと思ったが、普通にAmazonで売ってたので用意できた。

アクアビットを皿に注ぎ
1枚1枚丁寧に洗う

しっかりしたサイズのニシンの身が10尾以上入っているから、やはり量が結構多い。

妖怪シュールストレミング洗い

身をよくゆすいで水気をふき取れば、(相変わらずハエは寄って来るものの)臭いはかなり軽減された。

つづいて、ニシンの皮を除き、細切れのサイズに切る。これで、シュールストレミングの処理は完了だ。

伝統的な調理法

いよいよ実食。先のイベントでは、スウェーデン出身の登壇者が「シュールストレミングのレシピは1つしかない。アレンジもしない」と断言していた。

そのレシピとは、以下の通り。

「ツンブロード」に、ジャガイモ・トマト・レッドオニオン・青ネギ・サワークリームなどとともに、細かく刻んだシュールストレミングを乗せて食べる

刺激の強いシュールストレミングとバランスを取るように、ネギやサワークリームなど、香り・風味の強いものと合わせるのがポイントみたいだ。

ツンブロードはスウェーデンでよく食べられている薄いパンのことで、フラワートルティーヤの皮に似ている。今回は、ツンブロードが手に入らなかったので、市販のトルティーヤの生地で代用することにした。

トルティーヤに具材をのっけて、完成したのがこちら。

灰色がかっている欠片がシュールストレミング

なんかとても良い感じでは?

ほんのりシュールストレミングの臭いは感じるものの、ネギなど香りの強い食材のおかげでかなり抑えられている。まずは、切り込み隊長として私が行く。

緊張から『我が子を食らうサトゥルヌス』みたいな顔になる私

うーん、うんうんうん。うん、普通に美味しい。

シュールストレミングの味は、アンチョビにかなり近い。鼻をつく臭いのパンチに一瞬ひるむものの、口に入れれば玉ねぎの香りやサワークリームの酸味によってうまい具合に臭いがかく乱され、シュールストレミングの味わいをメインに感じられるバランスになっている。脳がちゃんと食材として認知できるラインである。

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