『バーチャルYouTuber名鑑2018』掲載1000人中、今も活動しているのは何人?→調べて引退済み・古参Vtuberに真相を聞いてみました
<古参VTuber座談会メンバーのみなさん>
ねこますさん(YouTubeチャンネル)
「バーチャル狐娘YouTuberおじさん」として2017年11月に活動を開始。個人VTuberのパイオニア的存在であり、VTuberブームの火付け役である「VTuber四天王」の一人。現在はVTuberを引退済み。
夜枕ギリーさん(YouTubeチャンネル)
大喜利動画やVTuber界の考察プレゼン動画などを投稿している個人VTuber。2018年8月にデビューし、現在もVTuberとして活動継続中。
寺悠迅さん(YouTubeチャンネル)
「バーチャルアナログ YouTuber キランユウ」として、2018年2月に活動を開始。紙を使ったアバターが特徴。現在VTuber活動は休止中。今回はプロデューサーの寺悠迅さんがキランユウちゃんの姿を借りて座談会に参加。
「古参VTuber座談会」はリモート会議ツールを使用し実施しました。
「古参VTuber座談会」開催!
本日はよろしくお願いいたします! まずは引退・活動休止率から見ていただきたいんですけど……
調査をした2023年1月時点で最終更新日から3ヶ月以上経過している人の割合は67.3%という結果になりました。逆に、現在も活動している人は32.7%になりますね。
生存率32.7%って、なんか思ったよりめちゃくちゃ残ってますね。
私もそう思います。
あ、意外と残ってるなという感想になるんですね。
だって、会社の倒産率とかあるじゃないですか。それと比較したら多くないですか?
『バーチャルYouTuber名鑑 2018』に掲載されているVTuberは2018年5月までにデビューしている方達なので、現在も活動している人は約5年は活動を継続していることになります。
5年後の生存率が32.7%と考えると、たしかに多いかも……?
ということで、あとで調べてみました。
この2018年初期の頃って、そこまで企業のVTuberっていましたっけ?
2018年2月に「にじさんじ」一期生がデビューしてますが、この頃は個人のVTuberが多かったですよね。「一発当ててやるぞ」って人ばかりじゃなくて、普通に趣味として始めた人も多いと思います。
「職業」と捉えるか「趣味」と捉えるかで印象が変わってきそうですね。
例えば釣りでもなんでもいいんですけど、単純に趣味でも5年続けてるって結構すごいことだと思うんですよ。
5年続けるってなんでも大変なことですからね。
そう考えると、5年も活動を継続してる人が32.7%もいるのは確かにスゴイ。
ライブ配信が多めのVTuberが多いのはなんで?
調査をしていると、「ライブの配信は頻繁にやっているけど、動画の投稿は数年前」みたいなVTuberさんが結構いました。やっぱり動画よりライブ配信のほうが編集しなくて済む分、お手軽ってことで配信が多くなってるんですかね?
投稿動画と配信動画は別のページに表示される。
それももちろんあるんですけど、1番はマネタイズ上の都合だと思います。
マネタイズ……収益の問題ですか?
動画の場合は1再生につき大体0.25円~0.4円あたりの広告収益が発生するんですけど、例えば1人の人間がこれで生計を立てようと思ったら、月間で100万再生くらい必要になってくるわけです。
めっちゃハードルが高いですね。
それに対して配信だったら1人の人から投げ銭を1000円とか1万円もらって、それを20回~40回繰り返せばいいので。
事業として考えると、薄く広く少ない単価で取る動画広告よりもライブ配信の方が、安定性は劣るものの高い収益性を目指しやすいんですよね。
なるほど~。YouTuberだと動画の再生回数を増やして広告料を稼ぐというイメージがあったのですが、VTuberは戦略が違ってくるんですね。
事業としてやっている企業のVTuberさんも、動画の広告料が全体の収入に占める割合ってそんなに無いってことですか?
ライブ配信メインのチャンネルの広告料については、投げ銭やメンバーシップに比べたら雀の涙だと思います。
ですよね。ほぼ無いと思います。
推し活ビジネスすげ~。
チャンネル・動画を削除した人の割合は?
今回の調査では、YouTubeチャンネルの削除や、VTuberの動画を全削除していた人の数もカウントしてみました。
チャンネル・動画を削除した人は1001人中276人という結果になりました。引退・活動休止状態になってる674人に限定すると40.1%もの人がチャンネル・動画を削除しているのですが、これは結構多くないですか?
多分、大きく成功できなかったことを理由に引退した方が多いと思うので、収益面で残すメリットが無かったり、未練も小さかった……というかむしろ黒歴史に感じたんじゃないかな?
削除されたチャンネルに現れる画面
かなりレアケースだとは思うんですけど、積極的にチャンネルを削除した人もいたと思いますよ。
積極的に動画を消した人……? 一体どんな人ですか?
自分のVTuber動画をポートフォリオとして、VTuber事務所に所属した人です。
ああ~~!
事務所で新たにVTuberデビューするためのステップアップとして消したということですか! 転生があるVTuberならでは理由だ……。
※転生とは……いわゆる「中の人」が別のアバターを使って新たなVTuberとしてデビューすること。
やっぱり、事務所からしたら過去に活動していたVTuberの動画は削除して欲しいものなんでしょうか?
炎上リスクを回避したいという思いはあると思います。例えば権利侵害とかですね。個人であんまり知名度がない時代は見過ごされていたものが、知名度が上がった後に掘り返されてしまう……といったリスクがあるので。
おそらく、事務所所属の契約に「過去の動画削除」を盛り込んでいる場合もあるのではないか?と予想します。
バーチャルYouTuberなのに、めちゃくちゃ現実的な理由だ……。
チャンネル登録者数の寡占割合は?
チャンネル登録者数の平均値と中央値も調べてみました。チャンネルを削除した人は登録者数がわからないので、チャンネルが削除されていなかった725人のデータになります。
平均値と中央値でだいぶ差があるな~。
中央値とは……小さい順に並べたデータのちょうど中央にあるデータのこと
登録者数の寡占割合も調べたんですが、偏りがスゴイんですよね。チャンネルが削除されていない725人の合計登録者が44,479,497人に対して、上位5人の合計登録者数は10,410,000人。
なんと、上位5人の登録者数が全体の23.4%を占めていました。
これ上位5人、だいたい誰だか分かっちゃいますね。
チャンネルを削除した人はそんなに登録者数がいなかったと推測できるので、実際の寡占割合はもっと上がって、上位5人で25%を超えてくるんじゃないかと思います。
上位15人のデータもあります。725人の合計登録者のおよそ半数を上位15人のVTuberが占めているという結果になりました。
「上位8人の金持ちが、全世界の個人資産の半分を持っている」っていう資本主義の負の側面みたいな状況になっちゃってます。
パレートの法則ですね。ある意味この分布が自然なのかもしれません。
ここまで登録者数に偏りが出てくるのは、やはり個人勢VTuberに対して、企業勢VTuberのほうが登録されやすい、見てもらえやすいという現実があるのでしょうか?
それはありますね。ただ、今の個人勢のトップの人たちって、アバター・企画・構成のクオリティなんかは、もう企業勢の人たちと比べても差がないんですよ。
そんな優劣がつきにくい状態で誰を見るか?となったときに、やっぱりコミュニティの大きい事務所所属のVTuberなら視聴者さん同士でも話題の共有がしやすかったりするので、企業勢VTuberをとりえず見ようという心理が働くのかもしれないですね。
たしかに、企業が運営しているVTuberグループを箱推しで応援するみたいな文化はありますよね。事務所所属VTuber同士のコラボ動画もよく見かけますが、逆に個人勢は知ってもらえるきっかけが少ないんでしょうか?
企業勢の場合、「にじさんじ」「ホロライブ」などのワードで検索トラフィックが取れるのも結構大きいと思います。
人数が多くてコミュニティがでかい大きな事務所っていうのは、Google検索にしろYouTube検索にしろ、グループ名のキーワードで検索トラフィックがとれるので。個人VTuberにはそれがないので、そこでも差がでてくるんだと思います。
※にじさんじ/ホロライブ……企業が運営している大手VTuberグループ
※検索トラフィック……検索してアクセスしてくれる人の量。
「検索されやすさ」が人気を左右するっていうのは、バーチャルアイドルっぽくてなんかいいかも……。
登録者数が1000人超えているVTuberの割合は?
登録者数が1000人超えているVTuberの割合も調べてみました。こちらもチャンネルを削除した人は登録者数がわからないので、チャンネルが削除されていなかった725人のデータになります。
YouTuberの場合、登録者数1000人を超えている人の割合は上位15%くらいと言われているようですが、それと比較するとなかなか多いですよね。やっぱり、VTuberのほうが登録されやすいとかあるんでしょうか?
これは『バーチャルYouTuber名鑑 2018』が、VTuberブームが加熱した2018年上半期にデビューした人を掲載しているので、それが理由だと思います。
この頃はまだVTuberが少なく、「VTuberはとりあえず登録する」という人も多かったので、かなり登録者数が増えやすかったんですね。
(動画投稿数がゼロにもかかわらず、「うん子」の登録者が62人もいたのはそういう理由だったのか……)
私も動画の企画で「2018年8月にデビューした人が1年後に1000人超えていた人の割合」を調べたんですが、そのときの割合は17%だったので、60%はかなり異常な数字ですよ。
確かに、2017年12月~2018年3月あたりのVTuberブームの盛り上がりはすごかったですよね。
まさにVTuberバブルと言っていいような熱狂があったと思うのですが、その当時にVTuberデビューしていたねこますさん、寺悠迅さんは実感としてどうでしたか?
(ねこますさんは2017年11月、寺悠迅さんは2018年2月にデビュー)
VTuberブームが起こった当時、YouTubeのアルゴリズムもそれをちゃんと検知して、VTuber動画がおすすめに出始めたりしたんですよね。だから、自分はインターネットに恵まれたって思ってるんですけど。
現実世界のブームの影響だけでなく、YouTube内部のシステム的な影響も大きかったということですか?
はい。アナリティクスを見た上での考察なのですが、YouTubeは内部的に自分たちのようにアバターで動画投稿していた人達を「VTuber」というグループに分類したと思うんですよね。
そのおかげで、他のVTuberさんのおすすめに自分の動画が表示されて、そこからのアクセス流入がかなりありましたね。
今の段階だと、ねこますさんと輝夜月ちゃんって関連動画として表示されないんですけど、当時は「VTuber」という枠組みがスゴイ狭かったので、「輝夜月ちゃんの動画からねこますさんの動画を観る」っていう動線がかなり多かったと思います。
※輝夜月……2017年12月4日にデビューしたVTuber。バーチャルYouTuberブームを一段と盛り上げた、火付け役の一人。
実際そうですね。輝夜月ちゃんの関連動画とかから流入してくる人が当時はかなり多かったです。今はVTuberの数が増えちゃって、そんなことは起きないんですけど。
やっぱり、VTuberバブルの影響はすごかったんですね。
私も影響は間違いなくありましたね。動画を3本くらいしか投稿していなかったんですけど、デビューしてから1ヶ月で2000人くらい登録者が増えたので。
登録者数2000人増やすって、そんな簡単な話じゃないですからね。
ビットコインブームみたいな感じで、VTuber全体が熱狂の渦に包まれていた時代だったんだな~。
VTuberを始めたきっかけは?
今まではVTuber全体のお話を聞いてきましたが、お三方の個人的なVTuberのお話も聞かせてください。皆さんはなぜVTuberを始めたんですか?
私の場合は、可愛いケモミミガールを作る創作活動の延長線として動画を投稿したって感じですね。VTuberとして成功するとは一切思っていませんでした。「収益で本を2~3冊買えたらラッキー」くらいの気持ちで始めたので。
「本を2~3冊買えたらラッキー」くらいの気持ちで動画投稿した結果、ねんどろいどになっちゃうの凄すぎますね。
私はVTuberを見る側としてハマっていたんですけど、知り合いがデビューしたのをきっかけに、面白そうだしやってみるか~くらいの気持ちでデビューしましたね。
最初は「Twitter始めてみるか~」くらいの感じだったんですか?
本当に、そんな感じです。ちなみに知り合いは引退しました。
寺悠迅さんは、VTuberデビューする前から動画を投稿されていましたよね。
そうですね。私はもともとネットで活動していたんですけど、VTuberに一般の人がどんどん参入していくのを見て、「そのうち実写なのに何らかの手段を用いてバーチャルを自称するやつが出てくるだろうな」と思い、紙人形を使った「バーチャルアナログ YouTuber キランユウ」の活動を開始しました。
寺悠迅さんがプロデュースする「バーチャルアナログ YouTuber キランユウ」
『バーチャルYouTuber名鑑 2018』には自分をバーチャルアバター化するハードルの高さからか、パペットなどを使ってVTuberを自称している方が結構いたんですけど、紙人形を使ったのはそういった消極的な理由ではなかったんですね。
違います。あの、良くないオタクのやつです。
苦肉の策だと思ってたら、ただの良くないオタクのノリだった。
VTuberをやっていて良かったことは?
「VTuber活動を5年継続してる人が32.7%もいた」というのは、収益とは別の部分でVTuber活動に魅力を感じている人が多かったからだと思うのですが、皆さんにとってVTuber活動の魅力とは何でしょうか?
私は昔から創作活動をしていたんですけど、VTuber活動を始めてからは、それまでなかったようなリスペクトの言葉なんかをかけてもらえて、それが非常に新鮮な感覚でしたね。
私も元々ブログなどで活動をしていたんですけど、VTuber活動を始めてからはもっと直接的に応援してもらえたり、VTuber仲間ができたりして、そういう今までに関わらなかった人たちと薄いつながりやコミュニティができたのは嬉しかったですね。
ねこますさんは、現在はVTuberを引退されていますが、活動をしていく上で心境の変化などがあったのでしょうか?
自分はそもそも、可愛いケモミミガールを作る創作活動の延長線としてVTuber活動を始めたので、自分の個性やキャラクターを楽しんでもらいたくてVTuberを始めたわけじゃないんですね。
VTuberに求められるタレント性のような素質もないですし、自分自身がVTuberのプレイヤーとして活動するのはあんまり面白みを感じなかったので、今はVTuberを引退しました。
なるほど。自分よりケモミミガールが主役だったんですね。
今もケモミミ美少女のアバターを制作したり、創作活動は続けています。ケモミミ美少女になる以上の幸福って、この世に存在しないと思うので。
にゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃんにゃん
猫の日猫の日猫の日だーーーーーーー!!!!!!!!うぉおぉおおおおおおおおぉおおおおぉぉおぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉ
ミュリネ / #KEMOMIMIX | #けもみみおーこく https://t.co/8v4Zo4pQyH https://t.co/9uxR5iERMv
— ねこます (@kemomimi_oukoku) 2023年2月22日
ケモミミガール愛が凄すぎる……。
VTuberデビュー検討中の妹からの素朴な質問
最後に、私事で大変恐縮なんですけど……VTuberデビューを考えている私の妹から質問をあずかっているので、お答えいただいてもいいですか?
質問はこちらになります。
ちなみに、左の銀髪ツインテアバターは、最近妹がアバターライブ配信アプリ「REALITY」で使っていたアバターです。
リアルの妹は公務員で副業が禁止なので、「VTuberで稼ごうと思ったら仕事辞めなきゃいけない」だそうです。
チャレンジャーだなぁ……。
公務員続けたほうがいいと思いま~す!
それは、本当にそう。
でも、「ぶっちゃけ稼げますか?」という質問に答えるとしたら、YouTuber・VTuberといった職業は個人が突き抜けて稼げる可能性のある数少ない職業だとは思いますよ。
「VTuberで稼げるか?」っていう質問は、「声優になって稼げるか?」という質問と一緒ですね。
夢はあるかもぐらい。
不動産なら公務員でも収入を得られるので、自分だったら公務員としての与信を使って融資を受け、よく勉強して必要な資格を揃えて不動産投資をすると思います。投資は自己責任なので強く勧める事はないですが。
妹に伝えておきます。
まとめ
『バーチャルYouTuber名鑑 2018』掲載VTuber1000人のうち今も活動している人って何人? という疑問から始まった今回の企画。
2018年当時にVTuberとして活動されていた皆さんのお話を聞くことで、数字だけでは見えてこなかった興味深いお話をたくさん聞くことができました。
VTuberブームは一段落したけれど、逆にVTuberデビューするハードルは当時と比較してかなり低くなっていますので、興味のある方は、VTuberデビューしてみてはいかがでしょうか?
以上、シュゴウがお送りしました。