「海外経験のある・高学歴な・国際結婚した女性」が日本を批判することについて

メガネライター、北条かや氏のエッセイを手がかりに、私見を述べてみました。
22
Kaya Hojo @kaya_hojo

【今の日本は「日本人はこんなに素晴らしい」と礼賛するTV番組、本で溢れているが、90年代には「日本のここがダメ!」という本が爆発的に売れていた、という話とその背景│みんなの英語ひろば-北条かや】 eigohiroba.jp/t/202

2015-06-25 06:15:37
Kaya Hojo @kaya_hojo

【「欧米人男性と結婚した日本人女性」が、日本の若者を批判したがるのはなぜか】(みんなの英語ひろば│北条かや) 彼女たちは「欧米=成熟、日本=未熟」という公式を立て、痛快な「日本批判」を繰り広げます。それがウケるのは、なぜでしょう?eigohiroba.jp/t/192

2015-07-03 12:00:54

私見

倉沢 繭樹 @mayuqix

北条かや氏の二本のエッセイ( bit.ly/1QR9fPT bit.ly/1GW0ev4 )を手がかりに、「国際結婚した女性、海外経験のある女性が日本を批判すること」について、ちょっと考えてみたいと思います。

2015-07-04 18:06:21
倉沢 繭樹 @mayuqix

北条氏が言及している二人の論者、イギリス人貴族と結婚したマークス寿子氏と、ドイツ人と結婚したクライン孝子氏は、日本という国や日本社会を批判していたというよりも、主に日本の若者を批判していた、という指摘がなされています。

2015-07-04 18:19:18
倉沢 繭樹 @mayuqix

北条氏は言います。「マークス寿子、クライン孝子両氏は、高い学歴や、欧米人との結婚、そして海外生活といった、ある種の『箔』をつけて、『日本のバカな若者・親・教師・サラリーマンたち』を批判したのです」。

2015-07-04 18:22:47
倉沢 繭樹 @mayuqix

そして、その批判に共感したのは、中高年層だったという。「海外の知見を武器に、『日本人の奥ゆかしさや賢さは、いつの間に失われてしまったのだ』と、主に若年層を批判する。これが、自信を失いかけていた中高年層の心をつかんだのです」。

2015-07-04 18:26:27
倉沢 繭樹 @mayuqix

つまり、マークス寿子、クライン孝子両氏がしていたのは、「日本批判」というよりは「日本の若者批判」だった。その言説が受容される理由は、彼女たちの属性、つまり「海外経験」「高学歴」「国際結婚」といったところにあった。

2015-07-04 18:33:54
倉沢 繭樹 @mayuqix

「欧米=成熟、日本=未熟」という前提で、「昔と比べてバカになった」日本の若者を批判した。それが、日本の現状の体たらくぶりを嘆く中高年層に訴求した、ということ。

2015-07-04 18:40:19
倉沢 繭樹 @mayuqix

また、男性中心の日本社会に向かって強く発言するために、彼女たちの属性は有効に機能した。「外国人姓を名乗ることが、日本批判をする際の“強み”になった側面もあるでしょう。彼女たちは『日本人でもなく、欧米人でもない』視点をもっていると評価された(かった)のです」。

2015-07-04 18:45:15
倉沢 繭樹 @mayuqix

北条氏はこう分析します。「海外経験という“箔”があれば、女性が強い主張をしてもスッと受け入れられる。90年代くらいまでの日本には、そういう風潮があったのではないでしょうか」。では、なぜ彼女たちはそうしたスタンスをとるのか。

2015-07-04 19:12:06
倉沢 繭樹 @mayuqix

北条氏はこう推測します。「(なぜ)国際結婚して多様な視点を身につけているはずの女性たちが、日本の若者を(一方的に)批判するのか。おそらく欧米人男性と結婚した際に、自らの『日本人らしさ』を高く評価されたからではないでしょうか。よく、日本人女性に魅了される外国人は、

2015-07-04 19:17:34
倉沢 繭樹 @mayuqix

日本ならではの『奥ゆかしさ』や『エキゾチックさ』などを評価するといいます」。そしてこう続けます。「そんな海外の男性に選ばれた日本人女性は、『むやみに欧米的な美を目指さなくても、日本人らしさを大切にすればいいのだ』と、考える傾向にあるのかもしれません」。

2015-07-04 19:22:59
倉沢 繭樹 @mayuqix

よって、彼女たちの立場は、伝統や共同性を重要視する「保守」に近いものになります。そう言えば、評論家の福田和也氏は、海外の美術館で日本の書家の作品を見て落涙し、自分が日本人であることを改めて思い知った、と書いていた。異なる文化に置かれたときに再発見する「日本人性」というものなのか。

2015-07-04 19:36:32
倉沢 繭樹 @mayuqix

さて、ここでやや話の方向を変えます。日本のフェミニズムの論客と言えば、すぐに思い浮かぶのが、上野千鶴子氏と田嶋陽子氏です。

2015-07-04 19:45:17
倉沢 繭樹 @mayuqix

上野氏と言えば、「女とコミュニケーションできない男は、マスターベーションしながら死んでいただければいい」といった「過激な」発言で知られています。その出発点は「マルクス主義フェミニズム」で、海外研究経験も豊富です。

2015-07-04 19:50:52
倉沢 繭樹 @mayuqix

田嶋氏はテレビで、自分の母親は「女に学はいらない」という因習に囚われていて、夜に勉強していたら電気を消されたことがある、といったエピソードを語っていて、印象的でした。「男にとって女は『穴』と『袋』にすぎない」といった「過激な」発言で知られています。イギリス留学経験があります。

2015-07-04 19:57:48
倉沢 繭樹 @mayuqix

上野、田嶋両氏は「海外経験のある高学歴女性」ではありますが、マークス寿子、クライン孝子両氏とは異なります。上野、田嶋両氏はアカデミックな研究者です。社会構造や政治を問題にします。

2015-07-04 20:10:48
倉沢 繭樹 @mayuqix

上野氏の批判をきわめて単純化して言うなら、「権力の支配的思想=男性中心社会の思想=男根支配(ファロクラシー)」へと向けた批判だということだと思います。廣松渉も指摘している通り、ある社会に適応している者たちは、その社会の支配的思想を無批判に肯定してしまう傾向がある。

2015-07-04 20:18:11
倉沢 繭樹 @mayuqix

哲学者、ルイ・アルチュセールの言葉を借りるなら「国家のイデオロギー装置」である教育機関や法的に定められた家族などを通して、主体は支配的思想=男性優位主義によって「教化」される、と言えます。

2015-07-04 20:32:35
倉沢 繭樹 @mayuqix

さて、これは「ポリティカル・コレクトネス」にふれることなので、慎重に言います。田嶋陽子氏自身も「男どもは私のことをブスだゴリラだと言う」と言っていましたが、田嶋氏の発言に対して「男に相手にされない女のひがみだ」といった中傷はしばしば耳にします。

2015-07-04 20:40:48
倉沢 繭樹 @mayuqix

しかし、これは、こう考えることもできます。「男に相手にされないブスだからこそ、見えるものがあるのだ。他の女が気づかない、または薄々気づいていてもスルーしている問題や矛盾を敏感に感じとれるのだ」と。田嶋氏は参議院議員でした。政治に向かわざるを得なかったのだと思います。

2015-07-04 20:50:27
倉沢 繭樹 @mayuqix

さて、海外留学はしたものの、現地で冷遇され、帰国後にナショナリストになってしまった知識人というのもいるみたいです。主に男性のようですが。「日本人性」を評価されて「保守」寄りになる女性とはまた違った経緯があるようで、興味深いです。

2015-07-04 21:05:35
倉沢 繭樹 @mayuqix

ところで北条かや氏は、最近活躍している女性論客として、めいろま、こと谷本真由美氏に言及している。彼女の日本批判は、主に労働環境や社会の現状に向けられている。海外経験が豊富で、ロンドン在住。「保守」の著名人だと見なされている。

2015-07-04 21:21:29
倉沢 繭樹 @mayuqix

しかし僕は、谷本氏は「保守」というより「遠くから日本を見守る下町のおばちゃん」のような存在だと思っている。「在外グラスルーツ右翼」とでも呼ぶべきか。

2015-07-04 21:27:13