キュヒョン長編 「Truth of Past」 #TOP #SJで妄想

キュヒョン長編 「Truth of Past」 #TOP #SJで妄想
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미* @umechan0110

1.「ジョンス先生~」ここは、小さな孤児院。「ん?どうしたの」私は物心ついた時から、ここで育った。「ドンへとヒョクがまだ帰って来ないよ」「ああ、またあいつらは…」ジョンス先生が営む、親の居ない子供達のための施設。先生はお父さん。みんなは兄弟。ここは、私の大切な家。 #TOP

2012-10-28 22:38:27
미* @umechan0110

2.「悪いけど、探して来てくれる?もう夕飯の時間だから」「ええ、また私が?」「そんな事言わないの。お姉さんでしょ?」「もう…仕方ないなあ」ここではみんながまるで家族のように暮らしていて、暖かかった。もちろん私は、本物の家族というものを知らない。 #TOP

2012-10-28 22:39:53
미* @umechan0110

3.「ドンへ!ヒョク!早く帰って来なさい!!」中庭に大声で叫ぶと、うわっ、と奇声が上がった。「姉ちゃん、怖い…」「怖いじゃないよ。なんでいつも時間通りに戻って来れないの?」「だってドンへが」「違うよ、ヒョクが!」「ああもう分かったから…ちゃんと、時間守らなきゃだめだよ」 #TOP

2012-10-28 22:40:13
미* @umechan0110

4.この2人も、ずっと昔からこの孤児院にいて、まるで本当の兄弟のように仲が良かった。それに私の事も、本当の姉のように慕ってくれていて、かわいい弟達だ。「先生~2人連れて来たよ…あっ、ほら、もうみんな集まってるじゃん!」他にも数名いる兄弟姉妹。私はここが大好きだった。 #TOP

2012-10-28 22:41:34
미* @umechan0110

5.「夕飯が終わったら、先生の所に来て」先生が他の子達に聞こえないように小さく声を掛けて来た。「え?私何かしたっけ…」「はは、違うよ。大事な話があるから」先生は、にこりと優しく笑った。大事な話…一体何の事だろう。私は少し不安が募る心を抑えて、みんなと並んで夕飯を食べた。 #TOP

2012-10-28 22:42:27
미* @umechan0110

6.「先生…話って?」夜、先生の部屋に向かうと少し悲しそうに笑われる。「ああ、座って。実はね、突然なんだけど…今日、男の人が訪ねて来たんだ」「男の人?」何の話だか、さっぱり分からない。「そう。驚かないで聞いてね。その人は、君のお兄さんだって…君を、引き取りに来たって」 #TOP

2012-10-28 22:43:15
미* @umechan0110

7.「何それ。私にお兄ちゃんなんていないよ…先生も知ってるじゃん」「そうだと思ってたんだけどね。申請してきた書類もしっかりしていて、すごく落ち着いた人だったよ。弁護士なんだって」突然そんな事言われたって、受け入れられる訳が無かった。だって、私は独りでここに来たんだから。 #TOP

2012-10-28 22:43:58
미* @umechan0110

8.「それで、どうしろって?」「君を引き取りに来たって。明日正式に迎えに来るって言って、そのまま帰っちゃったんだ」「明日?」あまりにも展開が急だ。ずっと育って来たこの孤児院から離れて、会った事もない男の人に引き取られるなんて。「意味わかんない…先生のバカ!」 #TOP

2012-10-28 22:44:57
미* @umechan0110

9.思わず部屋を飛び出してしまった。「あ、姉ちゃん!どうしたの?」「ヒョク…」ここのみんなとお別れだなんて、想像もしていなかった。「ヒョク…ヒョクは、ずっと私の弟だよね?」「は?どうしたんだよ急に…当たり前じゃん。ドンへだってそうでしょ?」「うん…ごめん、そうだよね」 #TOP

2012-10-28 22:45:54
미* @umechan0110

10.「やっと見つけた…」ヒョクと少し話をしてからベランダでぼうっとしていると、後ろから先生の声。「喜んでいいんだよ。本当の、家族が出来るんだから」先生の優しい声に、涙が溢れた。「俺は嬉しいよ。君に本当のお兄ちゃんが居たなんて…夢みたいだ」頭を撫でて、隣に座る。 #TOP

2012-10-28 22:47:16
미* @umechan0110

11.「でも、私…ここを出たくない」子供みたいな駄々をこねている事は分かっていた。でも、それ程に私は外の世界を知らなかったし、余りにもここに居過ぎていた。「分かってるよ。でも、知ってるよね。正式な申請が来た場合、断ったらいけないんだ。これは、幸せな事なんだよ」 #TOP

2012-10-28 22:48:02
미* @umechan0110

12.今までそうやって飛び立って行く兄弟たちを沢山見てきた。それを私は羨ましそうに眺めていたのもハッキリと覚えている。「お兄ちゃんと、2人で暮らすんだよ。幸せじゃない?君の事、迎えに来てくれたんだ」先生の笑顔は、昔から精神安定剤のように私の心を安らげる力を持っていた。 #TOP

2012-10-28 22:48:40
미* @umechan0110

13.「…そうかな」「そうだよ。それに安心して。ここを出ても、君はずっと僕たちの家族だから」頭を撫でていた手を肩に回して、優しくさする先生。私は、ついに本当のお兄ちゃんに会うんだ。とても変な感覚だった。「いつでも遊びにおいで。お姉さんがいなくなるのは、みんな寂しいから」 #TOP

2012-10-28 22:49:23
미* @umechan0110

14.先生の言葉を聞いて、静かに覚悟を決めた。その夜私は、眠れなかった。人生の全ての思い出がここにある。そして明日から、本当のお兄ちゃんと新しい人生を進んで行くんだ…「…家族、か」小さく呟いた声は、誰の耳にも届かず消える。見た事もない兄の姿を想像しては、強く目を瞑った。 #TOP

2012-10-28 22:50:30
미* @umechan0110

15.「ドンへ、荷物早く運べよ」「待ってよ…」朝、みんなが私を見送るためにせかせかと動き回っていた。「いいよ、2人とも。自分で出来るから」「嫌だ!姉ちゃんは黙ってて!」「そうだよ!ちゃんとお見送りしたいんだ!」この光景もしばらく見れなくなると思うと、やっぱり寂しかった。 #TOP

2012-10-28 22:51:09
미* @umechan0110

16.「あ、どうも…お待ちしてました」門の前で、ジョンス先生が誰かと話しているのが聞こえた。言われなくても、もちろんそれが誰かは知っていた。「この人が、君のお兄さんだよ」私の背中を押す先生。「あ、あの…」その人は、背が高く整った顔立ちをしていた。「は、はじめまして…」 #TOP

2012-10-28 22:51:46
미* @umechan0110

17.目を合わせた瞬間、嫌な感覚が背中を走ったのを覚えてる。「私の…お兄、ちゃん…?」だって、その人の瞳は余りにも闇色に染まっていて。「名前は…」まるで、光を一切遮断して深い闇を抱えているような。「…キュヒョンです」今にも飲み込まれてしまいそうな、恐ろしい感覚だった。 #TOP

2012-10-28 22:52:24
미* @umechan0110

18.キュヒョン、と名乗った私の【お兄ちゃん】は、一瞬だけ目を合わせるとすぐに車に向かってしまった。「ちょ…」みんなとの挨拶もままならないまま、着いて行くしか無かった。第一印象は、冷たいという事。「お邪魔します…」恐る恐る助手席に乗り込めば、彼は返事もせずに車を出した。 #TOP

2012-10-29 21:50:22
미* @umechan0110

19.車は見るからに高そうな黒塗りで、凄い威圧感がある。「あの…何て呼んだらいいですか」「別に何でも…キュヒョンでも、お兄ちゃんでも」まさか本当の意味でその呼び方を使う時が来るとは思っていなかった。「じゃあ…お兄ちゃん」それでも私はそう呼ぶ事を選んだ。だって家族だから。 #TOP

2012-10-29 21:52:32
미* @umechan0110

20.「奥の部屋、使って」マンションに荷物を全て運び終えると、お兄ちゃんはすぐに身支度を始めた。「じゃあ、俺…仕事があるから」「弁護士って聞いたけど…本当?」「そう。誰かが来ても、絶対に部屋開けるなよ」意味深な言葉を残して、玄関に向かう。 #TOP

2012-10-29 21:52:59
미* @umechan0110

21.「あ、あの…!」思わず呼び止めると、目線だけをこちらに向ける。「本当に…私のお兄ちゃんなんだよね?」すがるような目で見つめると、彼は扉の方に視線を戻して「だから連れて来たんだよ」と小さく言うとそのまま出て行った。「笑わない人なのかな…」閉まる扉を眺めながら呟いた。 #TOP

2012-10-29 21:53:26
미* @umechan0110

22.家の中は綺麗に整理されている、というよりも必要な物以外置いてないと言った方が正解に近かった。無機質な壁に、孤独が募る。私は、あの人とうまくやっていけるんだろうか。今まで描いて来た家族のイメージと、余りにもかけ離れていた。あの暗い瞳の奥は、一体何を映してるんだろう。 #TOP

2012-10-29 21:55:18
미* @umechan0110

23.その夜、お兄ちゃんは帰って来なかった。暇を持て余して2人分作った料理を見て、やたらと虚しくなる。「…家族って、兄妹って、何だろう」こんなに寂しい物なのかな?独りになるのは初めてだよ。私はソファで横になって見ていたつまらないテレビを消し、そのまま眠りに就いた。 #TOP

2012-10-29 21:55:38
미* @umechan0110

24.「風邪引くぞ…」遠くから聞こえたような声に、ふと目を覚ました。もうすっかり外は明るくなっていて。「なんでこんな所で寝るんだ」困った顔をしているお兄ちゃんがいた。「ごめんなさい」「部屋があるだろ」「そうだけど…帰って来るの、待ってた」重い目を擦って体を起こす。 #TOP

2012-10-29 21:57:17
미* @umechan0110

25.「部屋で寝ろ」「あのね、孤児院では、妹が寂しがってたら一緒に寝てあげたりするんだよ」自分が何でそんな事を言ったのかは分からなかった。でも、その瞬間お兄ちゃんがどうしたらいいか分からないという表情をして思った。そうか、この人は、きっと今まで独りで生きて来たんだ。 #TOP

2012-10-29 21:57:36
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