- kaban_baka
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… おかしい。 眠気が一向に訪れない。よく神経質だと言われることはある。自覚はしているが、特に否定しても意味はない。しかし、ここまでだっただろうか。ちょっとへこむ。 いや、そんなことを言っている場合ではない。皆の前で寝ぼけ面を晒すわけにはいかない。黒森峰副隊長として… →
2016-05-03 02:39:50副隊長 携帯を手に取る。時間は10時を少し回ったところ。迷いはあったが、申し訳ないと思いつつ電話をかける。その時が待ち遠しく、コール音一つ一つが間延びして聞こえる。長く思えたが、ほんの一瞬だったかもしれない。コール音が途絶えた。 →
2016-05-03 03:05:54「もしもしエリ…いつあっ、エっエリカさんどうかしたの?」 自然と笑みが溢れた。あぁ、みほはどこに行ってもみほなんだな。たとえ自分の隣にいなくても… 頬を液体が伝う。 「エリカさん…?」 「っ…ご、ごめんなさい連日連夜電話をかけてしまって。」 →
2016-05-03 03:23:20「ううん、大丈夫。私も少し眠れなかったところだから。」 「ふぅん。あなたって寝つきはいいほうだと思っていたけど。」 「うん。ところで、どうかしたの?」 「えっ、あっそうだったわね。えーと、そうそう、昨日の話なのだけれど、どうもうちの規模では難しそうなのよ。」 →
2016-05-03 03:43:21「あっそっか…ごめんなさい、力になれなくて…」 目の前にいなくとも、しょんぼりした様子が目に浮かぶ。 「別に責めているわけじゃないわ。そもそも私があなたの学校でのことを聞いたのだから…」 あなたの学校 →
2016-05-03 03:55:53時々自分が嫌になる。 「そ、そうかな…」 「そうよ。そこで、提案というかお願いなのだけれど、あなたも少し考えてくれないかしら。」 「えっ、う、うん。それは構わないけど。」 「そう、ありがとう。それじゃ。」 「えっあっエリカさ」 →
2016-05-03 04:33:22気分が悪い。 ベットに横になって目を閉じはしたが、結局眠ることはできなかった。こんな状態では戦車を指揮することなどとても出来ない。無理を押して挑もうものなら、隊長や搭乗員により迷惑をかけてしまうだけだ。申し訳ないが、体調不良とだけ伝え、訓練を休ませてもらった。 →
2016-05-03 05:48:05黒森峰の戦車道をより発展させるためとはいえ,その計画のために普段の練習が疎かになるようでは元も子もない。まずは無理にでも体を休めなくてはいけない。布団に入り目を閉じる。しかし眠りは訪れず,瞼の裏にあの光景がフラッシュバックする。たまらず跳ね起きる。 →
2016-05-03 06:03:10今の状態ではとても眠ることなど出来ないだろう。眠ることを諦めて牛乳を温める。自分のカップに注いだところで,ミルクパンに注いだ量が明らかに多いことに気づく。ちょうどマグカップもう一杯分ほど。長らく出ていなかったのに,妙な癖が出てしまった。諦めてもういっぱい作る。当然そこには。 →
2016-05-03 06:12:24出来上がったホットミルク二杯を小さなテーブルに置き,ベッドに腰掛ける。いっぱい目を口に運ぶ。温かい液体が体のすみまでほぐしてくれるように感じる。何も考えず,その感覚に身を任せる。一杯目を飲み終えた時,改めて全く手のつけられていない,冷めてしまったミルクに思いを寄せる。 →
2016-05-03 06:25:01何故このミルクは手を付けられていないのだろう。働かない頭で考える。何故向かいにあの人はいないのだろう。目線を上げるが焦点をあわせるあてもない。もう一度視線をミルクに戻し,手を伸ばす。指先が触れた瞬間,冷めてしまったマグの冷たさに,先程までの熱が奪われていくような気がした。 →
2016-05-03 06:31:18はっと正気づく。ひどく寒い。冷めてしまったものは仕方がないが,それを飲んでしまうと体の底から熱が奪われてしまうのではないかという不安にかられた。電子レンジで温めるという手もあるが,一度パンに戻して温め直そう。いくら訓練が厳しく疲れていても,必ずミルクパンで暖めていた。 →
2016-05-03 06:36:57弱火でじわじわと温める。焦げてしまわぬよう適度に混ぜる。底にできる渦を見ていると,それに吸い込まれ,沈んでいってしまいそうだ。と同時に湧き上がる甘い香気に,天まで連れて行かれそうになる。その両者の間でたゆたいながら,温め続ける。 →
2016-05-03 06:45:15温め終わったものをもう一度マグに注ぐ。これを普段飲むことは滅多になかった。甘く漂う香りを感じるのみ。しかし今日は香りだけでは足らなかった。より近くに感じたかった。白く甘い液体を口に運ぶ。鼻に抜ける香りが,まるで底にいるかのように感じさせる。 →
2016-05-03 07:00:48目を閉じる。もう開きたくない。このままならば寝ることができるかもしれない。何も考えず布団に沈み込む。 ようやくまどろみ始めた頃,着信音が鳴り響く。意識が急速に現実に戻される。悪態の一つでもつきたくなったが,もうそんな気力もない。重い頭を持ち上げ,携帯の画面を覗きこむ。 →
2016-05-03 07:25:50西住 みほ まったく,なんてタイミングでかけてくるのかと思いながら,少し嬉しいと思う自分もいる。 「もしもし,エリっ,エリカさん!いま電話しても大丈夫?」 「問題無いわ。どうかしたの?」 「うん,昨日の相談事の件なんだけどね,会長が,それなら交流合宿でもしてみる?って。」 →
2016-05-03 07:38:57あああああああああ,「うちのがっこう」じゃなくて「大洗女子」ってわざわざ言わせたい!大洗も母校だけど,黒森峰もそうなんだよって言わせたい!どうしよう!!!!!!!!!
2016-05-03 07:41:42「は?」 「大洗女子って20年位前までは戦車道が盛んだったんだって。それで調べてみたら過去には他校との交流も盛んに行われてて,その時に用いていた宿泊施設がまだあるらしいの。」 「へぇ。」 「ただ,私達はやったことがないから,もしやるのだったら事前に打ち合わせがしたいなって。」 →
2016-05-03 07:54:35「なるほどね。実現可能かどうかはともかく,案としてはありかもしれないわね。」 「そう?良かった。ところで…」 「なによ。」 「ううん,気のせいかもしれないけど,エリカさん元気ないなって。」 息が詰まる。みほはこういう時異様に鋭い。その理由も,今ならわかる気がする。 →
2016-05-03 08:04:37