初出探偵・カスガ氏の元ネタ探しファイル~ヒーローから各種SF、人情ものまで
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陳順宗の治世にトゥ・トゥックという若い役人がいた。ある日、パゴダの花を折ってしまい僧侶に咎められている娘を見たトゥ・トゥックは、自分の錦の着物を弁償代に差し出して娘を解放してやった。
2017-03-28 00:22:14数年後、官職を辞して田舎に引退したトゥ・トゥックが海辺を歩いていると、五色の雲を漂わせた浮き島が現れた。トゥ・トゥックが乗り込むと島は動き出し、島の洞窟でトゥ・トゥックは以前に救った娘と再会する。
2017-03-28 00:22:43娘は仙境の女王の王女であり、トゥ・トゥックの心優しさと高潔さに感じ入って、彼を仙境に招待したのだった。トゥ・トゥックは女王の許しを得て娘と結婚し、しばらくは幸福に暮らす。
2017-03-28 00:23:15やがて故郷のことが気懸りになったトゥ・トゥックは、仙境の女王にしばらく里帰りしたいと申し出た。しかし故郷へ戻ったトゥ・トゥックが見たのは、顔も知らない人ばかりで、知人の姿はどこにも見当たらなかった。
2017-03-28 00:23:56ひとりの老人だけがトゥ・トゥックの名を知っていた。老人の話によれば、トゥ・トゥックという人物はちょうど百年前に行方不明になり、とうとう戻らなかったのだという。陳朝もすでに終わり、今は黎朝の第四代だった。
2017-03-28 00:24:27トゥ・トゥックの家は誰も住まないぼろぼろのあばら屋になっていた。トゥ・トゥックは仙境に戻りたいと願い、人々の前から姿を消した。彼が再び仙境に戻ることができたのかどうか、誰にもわからない。 おしまい。
2017-03-28 00:25:01気になって調べてみたら、この手の「異界へ行って戻ってきたら何百年も経っていた」というパターンの話って、ブラフマーに会ったカクドミー王とか、中国の爛柯とか、ティル・ナ・ノーグへ行ったオーシンとか、世界中に類話があるんだね。
2017-03-28 02:25:29この中では『マハーバーラタ』にあるカクドミー王の話が一番スケールがでかくて面白かったので、ちょっと英語版Wikipediaから抄訳してみる。
2017-03-28 02:26:32カクドミー王にはレヴァティーという美しい娘がいた。王は自分の娘にふさわしい婿を選べるのは世界の創造者たるブラフマーを措いて他にはないと考え、ブラフマーの助言を得るために娘を連れてブラフマーロカ(天界)へ昇った。
2017-03-28 02:27:03父娘がブラフマーの許を訪れると、ブラフマーはガンダルヴァの妙なる音色に耳を傾けている最中であった。カクドミー王は演奏が終わるのを待つと、ここに来た理由を述べて、花婿候補者の一覧を読み上げた。
2017-03-28 02:27:43それを聞いたブラフマーは笑い出した。「お前は地上と天界では時間の流れが違うのを知らんのか。お前がこのブラフマーロカに足を踏み入れてから、地上ではもう27チャタルユガ(1億1664万年)が過ぎておるのだ」
2017-03-28 02:28:13「お前が義理の息子に選ぼうとした者たちも、その息子も、その孫も、その子孫もとうに死に絶えて、その名を覚えている者すらおらんのだ。お前にはもう誰もおらぬ。お前の友も、家臣も、召し使いも、妻も、血族も、兵士も、財産も、みんな時が押し流してしまったのだ」
2017-03-28 02:28:56この知らせにカクドミー王は狼狽した。しかしブラフマーは彼を慰め、今ちょうどヴィシュヌ神がクリシュナとバララーマに化身して地上に生まれているから、バララーマを婿として迎えるようにとカクドミー王に勧めた。
2017-03-28 02:29:43地上へ戻ったカクドミー王とレヴァティーは仰天した。27チャタルユガの間に、人類の精神と文明は発展と衰退を繰り返し、今や人類の知性や体格や活力は、王たちが出発した時より低くなっていたからである。おしまい。
2017-03-28 02:30:47@JULY_MIRROR と言うか、今から1億1千万年前っつったら白亜紀中期ですよ? ティラノサウルスもまだ生まれてない時代ですよ?
2017-03-28 02:36:34@lenard_hohoemi ちなみにヒンドゥー教では1チャタルユガ(432万年)で人類の文明は一周するので、27チャタルユガだと文明が27周したことになります。
2017-03-28 02:55:39すんません、ちょっと訂正。よく調べたらカクドミー王とブラフマーの話が載ってるのは『マハーバーラタ』じゃなくて、『バーガヴァタ・プラーナ』(第9巻3章..「初出探偵・カスガ氏の元ネタ探しファイル~ヒーローから各種SF、人情ものまで」togetter.com/li/978509#c359…
2017-03-28 16:36:23.@kasuga391 さんのコメント「実は永井豪の「真夜中の戦士」(1974年)には、ポール・アンダースンの「不滅のゲーム」(1954年)とフレドリック・ブラウンの「忠臣」(1960年)という、元ネタになった短篇があったりします。@tohtetsu」にいいね!しました。 togetter.com/li/1242449#c51…
2018-07-03 03:12:42これは〇〇の分!と言って殴る復讐者
※単独のまとめができたのでそちらにリンクを張りました
主人公が悪役を「これは○○の分! そしてこれは○○の分だ!」と仲間たちの名を呼びながら殴りつける描写の源流 - Togetter togetter.com/li/1245851 @togetter_jpさんから
2018-07-12 07:17:20.@kelbim_eden さんのコメント「三銃士の該当のシーンは「ダルタニャンと三銃士が密命を帯びた旅路を刺客に阻まれ、三銃士が順々に脱落していきながらダルタニャンを送り出す」と言う流れなので、すなわち「ここは俺に任せて先に行け」展開の古典と..」にいいね!しました。 togetter.com/li/1245851#c51…
2018-07-12 07:16:40『大いなる眠り』のdon't shoot it at people, unless you get to be a better shot(もっと上手くなるまで、人を撃つのはやめておけ)が誤訳された結果、「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」という名フレーズが生まれた故事を髣髴とさせる、心温まるエピソード。 twitter.com/kasai_sinya/st…
2018-10-22 06:08:42『メタルダー』のサブタイトル「余は神、ネロスなり」が「Neros becomes more than God」と訳されてた事もあった。これは一人称の「余」を「~以上の」と解釈した誤訳なんだけど、結果として「ネロスは神をも超えるものとなる」という「名誤訳」になっていた。
2018-10-22 04:29:17ちなみにこの誤訳は日本語版Wikipediaの[[フィリップ・マーロウ]]の記事にも堂々と掲載されていて、誤訳と辻褄を合わせるために、勝手に原文にない“I”まで追加している。
2018-10-22 06:09:29