着物1枚に使う繭は3000個!鮮やかな緑色の繭を作る希少な蚕「やまこ」を守る人が語る魅力とは

やまこの繭から紡がれる伝統文化
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ツイートとともに投稿された画像にあるのは、蚕(かいこ)の繭、その数なんと3000個。これが着物1枚を作るのに必要な量なのだという。

大きな器からあふれ出ている緑色の繭

ツイートを投稿したのはYAMAKO_PROJECT(@yamako_project)さん。長野県安曇野市で野生の蚕を育て、繭から製糸するという活動を行っているプロジェクトチームだ。信州・安曇野地方ではこの蚕を、親しみをこめて「山蚕(やまこ)」と呼んでいるという。

やまこの特徴は、繭の鮮やかな緑色。白い繭を作る家蚕の蚕(かいこ)に対して、野生種の天蚕は山で育つことから「やまのこ」→「やまこ」と言われるようになったという説があるそう。

やまこの繭から作られた希少な糸

着物1枚を織るために3000個もの繭が必要だというツイートに対し、Twitterユーザーからは「やまこは緑色の宝石ですね」「母の遺品にやまこの着物があります。大事にします」などの反響が寄せられている。

やまこを飼育する過程、通常の蚕との違いなど、YAMAKO_PROJECTさんに詳しく話を伺った。

太陽の光を浴びて緑色になる「やまこ」

やまこが緑色の繭を作るまでの飼育過程を教えてください。

白い繭を作る家蚕(いわゆる蚕)と緑色の繭をつくるやまことは、育て方が異なります。やまこは野生種なので、山の中のクヌギの林で太陽の光を浴びて育ちます。

冬の間保管された卵は、春が来て暖かくなると孵化して小さな毛虫になります。さらに成長していくに従って緑色の大きな体になり、4回脱皮を繰り返します。 5齢になり成熟すると、繭を作る準備をはじめます。 口から糸を吐きながら繭を1〜2日ほどかけて作っていきます。

右側手前がやまこの餌となるクヌギの畑
クヌギの葉を餌にしてスクスク育つやまこ

室内で育てられる蚕の白い繭と違い、やまこの繭は太陽光が作用して美しい緑色に変化します。

そのため野外のクヌギ畑の中でやまこを育てるわけですが、虫の期間は鳥に、繭になると今度は猿にも狙われます。せっかくできた繭を猿にすべて食べられたということもありました。

天敵の多い野外で太陽光を浴びないと、きれいな緑色にならないという

やまこの繭の魅力は?

やはり、なんと言っても新緑の山の色のような天然の緑でしょうか。人工的に染めても、なかなかこの優しい色合いは出すことができません。ずっと眺めていたくなるような飽きのこない色です。

自然が作りだすものなので、ひとつとして同じ色の繭はできないところも魅力です。一番外側の表皮から内側に従い、色味も萌黄から薄緑色、そして黄淡色へと変化し自然なグラデーションを持つ緑の糸になるのです。

繭の外側の糸と内側の糸では、これだけの色の違いが出る

また、やまこの糸は「糸のダイヤモンド」ともいわれるほど見事な輝きで、きらめくような光を放ちます。
その自然の輝きはなかなか写真では写し出せないので、機会がありましたらぜひ肉眼でご覧になっていただきたいなと思います。

そしてやまこの糸で織られた布の着物は一生物として長く着ていただけるもので、軽くて夏は通気性も良くて涼しく、冬は暖かく丈夫で大変に機能的です。

機能性に優れた総天蚕織の着物

多くの人の尽力により生み出されている、やまこの繭の着物。これからもこの伝統を紡ぎ続けてほしいと願うばかりだ。

YAMAKO_PROJECTさんのTwitterアカウントでは、やまこの成長や着物が完成するまでの記録を日々ツイートしている。興味のある人はフォローしてみては。

記事中の画像付きツイートは許諾を得て使用しています。
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書いた人
hiro

佐賀県出身です。佐賀在住で犬猫飼ってて動物が大好きです。2年前からフリーライターしています。風景写真を撮るのが趣味でクラウドにたくさんあります(^^♪