着物1枚に使う繭は3000個!鮮やかな緑色の繭を作る希少な蚕「やまこ」を守る人が語る魅力とは
ツイートとともに投稿された画像にあるのは、蚕(かいこ)の繭、その数なんと3000個。これが着物1枚を作るのに必要な量なのだという。
着物一枚を織るのに、やまこの繭がこれだけ必要です。 https://t.co/H91Jr4Q0BI
— YAMAKO_PROJECT (@yamako_project) 2023年5月27日
ツイートを投稿したのはYAMAKO_PROJECT(@yamako_project)さん。長野県安曇野市で野生の蚕を育て、繭から製糸するという活動を行っているプロジェクトチームだ。信州・安曇野地方ではこの蚕を、親しみをこめて「山蚕(やまこ)」と呼んでいるという。
天蚕。「てんさん」という言葉を聞いたことがありますか?
野に育つ野生の蚕(かいこ)です。
信州安曇野では、山蚕(やまこ)と呼ばれます。
繭といえば、白い繭を思い浮かべるでしょうが、天蚕の繭は、こんなあざやかな緑色なんです。 https://t.co/ZJQuAYVVEX
— YAMAKO_PROJECT (@yamako_project) 2021年2月10日
やまこの特徴は、繭の鮮やかな緑色。白い繭を作る家蚕の蚕(かいこ)に対して、野生種の天蚕は山で育つことから「やまのこ」→「やまこ」と言われるようになったという説があるそう。
やまこの繭は一粒が1gほど。
でも、この一粒からとれる艶やかな糸は、たったの0.2〜0.3gだけ。
着物にするには、3000粒が必要なのです。 https://t.co/7CHzUjblDh
— YAMAKO_PROJECT (@yamako_project) 2023年5月29日
着物1枚を織るために3000個もの繭が必要だというツイートに対し、Twitterユーザーからは「やまこは緑色の宝石ですね」「母の遺品にやまこの着物があります。大事にします」などの反響が寄せられている。
やまこを飼育する過程、通常の蚕との違いなど、YAMAKO_PROJECTさんに詳しく話を伺った。
太陽の光を浴びて緑色になる「やまこ」
やまこが緑色の繭を作るまでの飼育過程を教えてください。
白い繭を作る家蚕(いわゆる蚕)と緑色の繭をつくるやまことは、育て方が異なります。やまこは野生種なので、山の中のクヌギの林で太陽の光を浴びて育ちます。
冬の間保管された卵は、春が来て暖かくなると孵化して小さな毛虫になります。さらに成長していくに従って緑色の大きな体になり、4回脱皮を繰り返します。 5齢になり成熟すると、繭を作る準備をはじめます。 口から糸を吐きながら繭を1〜2日ほどかけて作っていきます。
この天蚕繭は、安曇野の穂高有明で育ちました。
白い繭の家蚕(かさん)は、言葉の通り、屋内で飼われますが、天蚕は山蚕(やまこ)の通り、おひさまの光をたくさん浴びて、元気いっぱいに育ちます。
#やまこ #天蚕
#やまこプロジェクト
右側手前がやまこが育つクヌギ畑です。 https://t.co/lGNVyZqGI6
— YAMAKO_PROJECT (@yamako_project) 2021年2月12日
室内で育てられる蚕の白い繭と違い、やまこの繭は太陽光が作用して美しい緑色に変化します。
そのため野外のクヌギ畑の中でやまこを育てるわけですが、虫の期間は鳥に、繭になると今度は猿にも狙われます。せっかくできた繭を猿にすべて食べられたということもありました。
太陽光の強度や照射時間によって、繭色も変わってきます。
やまこが鮮やかな緑色の繭を作るには、太陽の光が欠かせないのです。
#天蚕 #やまこ #ヤママユガ https://t.co/2LBE7XKeTy
— YAMAKO_PROJECT (@yamako_project) 2021年2月24日
やまこの繭の魅力は?
やはり、なんと言っても新緑の山の色のような天然の緑でしょうか。人工的に染めても、なかなかこの優しい色合いは出すことができません。ずっと眺めていたくなるような飽きのこない色です。
自然が作りだすものなので、ひとつとして同じ色の繭はできないところも魅力です。一番外側の表皮から内側に従い、色味も萌黄から薄緑色、そして黄淡色へと変化し自然なグラデーションを持つ緑の糸になるのです。
天蚕繭からひいた糸たち。
淡い緑色は繭の外側からひいた糸。右側の白っぽい糸は、繭のいちばん内側からひいた糸です。
#天蚕 #やまこ #手仕事 https://t.co/RhxKki5LDW
— YAMAKO_PROJECT (@yamako_project) 2021年5月14日
また、やまこの糸は「糸のダイヤモンド」ともいわれるほど見事な輝きで、きらめくような光を放ちます。
その自然の輝きはなかなか写真では写し出せないので、機会がありましたらぜひ肉眼でご覧になっていただきたいなと思います。そしてやまこの糸で織られた布の着物は一生物として長く着ていただけるもので、軽くて夏は通気性も良くて涼しく、冬は暖かく丈夫で大変に機能的です。
@abarthmen この着物も総天蚕糸で織ったものですが、肩と裾は、藍にに黄色をかけて、萌葱に染色しています。 https://t.co/T8QAIMva9J
— YAMAKO_PROJECT (@yamako_project) 2023年6月1日
多くの人の尽力により生み出されている、やまこの繭の着物。これからもこの伝統を紡ぎ続けてほしいと願うばかりだ。
YAMAKO_PROJECTさんのTwitterアカウントでは、やまこの成長や着物が完成するまでの記録を日々ツイートしている。興味のある人はフォローしてみては。