飼い主が手を振ると腕を振り返してくれるタコさんに反響!魅力的な共同生活について聞いてみた

知れば知るほど深みにハマるタコの魅力
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飼い主さんが手を振ると、水槽の中から腕を振り返してくれるタコさんの動画がX(Twitter)で話題だ。

 

飼い主さんがタコに手を振ると…
タコもめいっぱい2本の腕を伸ばしてリアクション

飼い主さんのもち(@mochi_deepsea)さんが水槽で飼育しているタコの「梅干しちゃん」に手を振ると、梅干しちゃんはニョキニョキと2本の腕を伸ばして反応。腕の先をゆらゆらと動かし、もちさんに向けて振り返して応えてくれているようだ。

Xユーザーからは、「タコの知能は高いと聞いていたけど、すごい…」「コミュニケーションが成立している…」「まるで宇宙人との挨拶みたいですね」など驚きの声が多く寄せられた。

今回の梅干しちゃんのリアクションや、普段の様子などについてもちさんに伺ったところ、梅干しちゃんへの愛ほとばしる暮らしが見えてきた。

梅干しちゃんはうれしいと水槽の中で踊ることも

梅干しちゃんが手を振り返してくれたのはいつ頃から?

初めて手を振り返してくれたのは、今回の動画を撮影した10月8日です。水槽の中から梅干しがこちらを見ている気がしたので「おーい」という感じで手を振ってみると、2本の腕を振ってくれました。

時間を空けて2回ほど手を振ってみても、ガラスにくっついてこっちを向いたまま同じ動きをしたので、動画を撮影しました。

今回の動作は飼い主さんだけにするのでしょうか。

我が家に来客があるときは、水槽の壺の中でおとなしくしています。壺の向きを自分で変えて、水槽の外から自分(梅干し)が見えないようにすることもあります。

飼い主が水槽に顔を近づけたときと、友人や親族など私以外の人が水槽に顔を近づけたときとでは明らかに反応がちがうので、人間の区別をしていることは間違いないように感じます。

その上で、飼い主以外に対しては警戒をするというよりも、「人見知りをする」という表現がしっくりくるようなリアクションをします。

壺の中で防御態勢を取る梅干しちゃん

ただ、他人が来ても完全に隠れたり引っ込んでしまう訳ではなく、こっそり様子は見ているようです。水槽内の岩や壺の後ろからにゅっと二つの目がのぞいていることが多いです。

他にどのようなコミュニケーションを取っていますか。

今回、われわれ人間が手を振るように2本の腕を振ってくれたのは、飼育者のアクションに対してのリアクションとして分かりやすいものだったと思います。

もちさんの動きに応える梅干しちゃん

梅干しの感情は複雑なのかもしれませんが、飼育し始めて月日が浅いので、複雑なやりとりはまだまだできていません。それでも「飼育に必要なお世話」以外のスキンシップをとるようにはしています。水槽のガラス越しに手を合わせたり、私が指を動かしてそれを梅干しが追いかけて遊んだりしています。

特別なことではないかもしれませんが、こうした私の動きに梅干しが必ず反応をすること、その反応に規則性がないことから、単純な動作をお互いに行う中でもそれなりに複雑な気持ちのやり取りができそうだなと、とても愛しく感じています。

飼育中に、梅干しちゃんの感情を感じる瞬間はありますか。

私以外の人間や、普段食べていない餌、水槽に新しく入れたオブジェなどに対して、警戒をすると同時に興味を示します。

私についても、普段とは違う動きをする(例えば普段は右手で水槽のメンテナンスを行っていますが、スキンシップをとろうとして水槽に両手を入れるなど)と、戸惑いつつも興味を持つような仕草を見せます。

これは私の主観ではありますが、タコは軟体動物であり、全身が柔らかく動くので、腕や顔(のような部分)という部位別の動きではなく、全身を使って感情を表現していると感じることが多いです。

「敵か味方か」といった表現ではなく、「人見知り」のような中庸な表現をあてはめてしっくりくるような表情を全身で見せてくれるように感じています。

梅干しちゃんを飼うにあたりタコの生態を学ばれたのでしょうか。

私は友達になりたい生き物を飼育して一緒に過ごす時間を楽しんでいます。

ですから、専門的な書物(『タコの知性 その感覚と思考 (朝日新書)』『世界一わかりやすいイカとタコの図鑑(化学同人)』など)を読みつつ、基本的には「飼育にあたって気を付けること」と、「その生き物の性質」といった知識を中心に集めています。

 

タコの生態を知るためもちさんが購入した本

一緒に暮らす中で見つけた発見は?

私は両生類や魚類、爬虫類などいろいろな生き物の飼育経験がありますが、タコの飼育で新鮮だと感じるのは「興味を示すこと」です。

普段と違う人、違う餌、新しいオブジェなどに対して、多くの生き物は、変化を嫌うような仕草を見せますが、梅干しはまず興味を示します。

慎重に警戒しながら接近しつつも、必ずと言っていいほど腕で触れてみます。非常に繊細な動きで、いろいろな角度からいろいろな触れ方をします。その際に、体色が目まぐるしく変化することがあります。不機嫌そうになるときもあれば、うれしそうになることもあります。

ほかにも、水槽内の温度計の吸盤部分を剥がしてみたり、水槽の泡が出る部分にあたってくつろいでみたり、カメラで撮影しているとレンズを触ろうと水槽越しに腕を伸ばしてきたりします。

身体の色も日によって変化するみたい

また、最初は興味を強く示したものでも、2、3回目に渡してあげるとポイと捨ててしまうこともあります。飽きることもあるようです。

梅干しの興味の示し方には、生きていくために必要かどうか(例えば、必要な餌かどうか)がそこまで強く関連していないように見えます。「直接生存のためには必要がないであろう行為=遊び」を積極的に行い、興味を示し、楽しんでいるようです。

"タコは賢い"とはよく言われますが、こういった「遊び」を好むところも知能が高い証拠なのかな、と、飼育してみて感じました。

梅干しちゃんのかわいいと思うところは?

感情を見せてくれるところです。

水槽の中で踊っていることがあります。私が水槽の近くにいると、ガラス面に近づいてきてこちらを見てきます。かまってあげないで放置すると、ふてくされることがあります。

外出などで長時間構ってあげることができないと、これもまた水槽の底の方でふてくされて寝ていたります。機嫌を直すのに少し時間がかかります。

逆に触れ合ったり遊んだりご飯をあげたりすると、うれしくなって色が変わったり水槽の中を踊るように泳いだりします。色も形もめまぐるしく変わります。スキンシップに対して、このような反応をしてくれることは、私との関わりを楽しんでくれているように思えてうれしいし、かわいいなと思います!

ゴキゲンな時は踊るように動き回るそう

他にも印象的なエピソードはありますか。

ご飯をあげたり遊んだりできず、水槽の前に居ない時間が続いた日の夜のことでした。ビシャビシャという音がリビングに響き渡っていたので様子を見に行ってみると、梅干しがわずかな水槽のふたの隙間から水鉄砲ように水を吹き出して床を水浸しにしていました。

塩水ですから、気をつけないと結構怖いのですが(笑)とりあえずはかまってあげないと…と思ってしまいます。

飼育をし始めてから2か月くらいで、いろいろなことがありました。この回答を書いている間も、梅干しから顔に水を吹きかけられて喜んでいます。

日々、新しい変化と新しい表情を見せてくれる梅干しと、これからどんな新しいスキンシップがとれるのかワクワクしています。

梅干しちゃんとの生活で注意していること、心がけていることを教えてください。

飼育にあたって気を付けているのは「水質を維持すること」です。

梅干しは吸盤の脱皮を2,3日に1回の頻度で行います。これを放置すると水質が悪化します。タコは水質の悪化には弱い生き物だというので、水替えの頻度は高いです。

また、タコは知性が高く寿命が短いので、一緒に生活するにあたって一緒に過ごす時間を濃くしてあげることが大切だと感じています。これほどに賢い生き物がわずか1年ほどの寿命しか持ってないということに、飼い主としての責任と、梅干しに対する敬意を感じます。

梅干しが生涯の中でどれだけの経験を積めるか、どれだけの刺激を感じることができるかは、飼育をしている私にかかっています。

一緒に過ごす時間が人間の時間単位で長いのではなく、タコの時間単位で濃くしてあげたい。寿命の中で幸せを80与えてあげられるか120与えてあげられるか。100の感情を共有できるか、1000の気持ちを共に過ごせるか。こうした視点で、飼育者として謙虚であるように心がけています。

タコの生態や飼育の情報を参考にするのはもちろんなのですが、実際に関わっていくなかで起きる、学術的な根拠がないような事柄についても、梅干しと一緒に考えて、より良い、より楽しい関わり方を日々模索しています。

今後もどんな表情を見せてくれるのか楽しみ

もちさんと梅干しちゃんが、種を越えたコミュニケーションを通じて彩のある暮らしをしていることがひしひしと伝わってくるお話だった。もちさんから深い愛情を注がれた梅干しちゃんは、これからもその知性で人間を驚かせ、感情豊かに楽しく生きていくことだろう。

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