パリの『縁日博物館』で100年前のアトラクションを体験したカメラマンに聞く「エンタメの価値」

100年前のメリーゴーランドに乗れるなんて
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フランス・パリにある「縁日博物館」に行ったとの報告ツイートと添えられた幻想的な写真が、Twitterで話題になっている。

現代に存在するとは信じがたい幻想的な空間の数々

パリの東の端に位置する「縁日博物館」は個人が所有する施設で、100年以上も前の縁日で実際に使われていた屋台や、移動遊園地で使われたメリーゴーランドなどのコレクションを展示している。また、一部の展示品は実際に体験できるという貴重な場所である。

完全予約制の当館にガイドツアー付きで訪れたカメラマンのしめ鯖(@zz_saba)さんは、メリーゴーランドに乗車した動画も撮影しツイートしている。

日本ではあまりなじみのない、豪華な装飾の屋台や移動遊園地の乗り物。実際に体験した感想をしめ鯖さんに聞いた。

「エンターテイメントの価値は技術だけで決まるものではない」

「縁日博物館」をどこで知りましたか?

ガイドブック、『地球の歩き方』(地球の歩き方編集室)を読んで知りました。 ウェブでの情報があふれる昨今、ガイドブックというのもベタな情報源かもしれません。しかし長時間のフライト中のオフライン環境下でも読むことができる上、旅をする上で現地の歴史や情報を頭に詰めておくためにも、遠征前は必ず目的地の『歩き方』シリーズを読んでいます。

もともとゲームや漫画で見る世界が好きで、海外への撮影に行くようになった経緯があります。「縁日博物館」に関してはお祭り好きだったり非日常的な雰囲気が好きであることに加え、 藤田和日郎先生の漫画『からくりサーカス』の大ファンでもあり、「100年前の移動動物園の景色を見られるここだけは絶対に外せない」と感じました。

「縁日博物館」ガイドツアーを体験された感想は?

ジェスチャーを交え説明するガイド。フランス語が分からないながらもさすがの話術を感じたそう

博物館のガイドが何を説明しているのか、どんなジョークを言っているのか理解できなかったのは、「縁日博物館」という場所を理解する上で大きなマイナスだったなと痛感しています。

あとはガイドが飛ばしたであろうジョークで皆が大笑いしているとき、自分一人だけ「何言ってるかワカラン…!!」と微妙な笑顔を浮かべるのはツライものがありました。

言葉が分からなくとも客とガイドの空気感で「今たぶんスベッたな…」と察することもあったのですが、その後のリカバリーも含め、ガイドのプロの話力を肌で感じる事ができました。

場所を考慮した上で、クラウンの衣装でガイドしていたら更に最高の観光スポットになるだろうなと思います。

印象に残ったアトラクションを教えてください

自分がまったく見た事がなかったものですと「競馬レース」のゲームですね。

うまく球を狙って高得点の穴に入れる仕組みは日本の温泉街の遊技場等でもまれに見かける「スマートボール」に近いのですが、得点分だけ目の前のフィールドの馬が前に進むという演出が加えられています。仕掛けはシンプルながらこれだけ大掛かりなアトラクションが昔からあったのか…と感動しました。

このゲームには別タイプのものもあり、馬ではなくワイングラスをお盆に載せた給仕が前に進んでいくものでした。

「縁日博物館」を訪れた前日にはディズニーランド・パリに赴いていたというしめ鯖さん。100年前と現在のエンターテイメントパークを続けて見た感想を「対比が非常にイイ感じ」ともツイートしている。

ディズニーランド・パリとの違いに感じたことはありましたか?

ディスニ―ランドパリで見たものは大資本ゆえのエンターテイメントであり、人・最新鋭の技術・お金などを惜しげもなくつぎ込んでいるということは間違いないです。 特に今、開園30周年の企画として、白雪姫の城にプロジェクションマッピングをしていましたが、これは言葉で形容できないほどのもので、度肝を抜かれました。

カメラマンとして写真を撮りにフランスに来た身としては、そのすごさを見る人に伝える事ができない光景というのはくやしくもあります。

対して「縁日博物館」は、技術的な部分では比較にならないとはいえ「人を楽しませる」という一点においては決して劣るものではなく、 エンターテイメントの価値は技術だけで決まるものではないのだなと感じました。

100年後にはいったいどんなエンターテイメントやアトラクションが生まれているのだろうか…という事を考えると胸が躍ります。さすがに年齢的に自分が見る事ができないのが非常に残念です。

しめ鯖さんは、これまでも国内外の戦跡・世界遺産を訪れ、撮影した幻想的な作品を写真集として出版している。

最新刊『幻想店舗録 異世界に一番近い場所 Next level』はPIE International社から発売中。しめ鯖さんの写す世界観に興味を持った方はぜひこちらもチェックしてみては。

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