某町の公図で見つかった「クリスマスツリー型の土地」の謎…土地所有者に登録の意図を聞いてみた
もともと「趣味」で見始めた公図
次からの質問は、ツイート主である水道水さんに回答いただいた。
水道水さんがこの公図を見つけたきっかけを教えてください。
同市内に鉄道路線の廃線跡があり、それを公図で追っていました。あるとき、うっかり字(※1)を間違えて公図を請求したら、クリスマスツリーの筆(※2)が映りこんで、見つけました。
※1 字(あざ):郵便番号が振られる単位とおおよそ同じ。例えば奈良地方法務局の本局の住所は「奈良市高畑町552」だが、このうち「高畑町」の部分が字(大字)にあたる。
※2 筆(ふで):別々の地番に分かれた土地の一つ一つのこと。「ひとふで」「ふたふで」と数える。
水道水さんは、このような公図を趣味や研究で見ているのでしょうか?
趣味です。
もともと、「住所」という不確実なものに疑問を抱き、法的に有効な、「地番」の方が信用できると思っていました。筆をいじるためには、かなりの費用が掛かるため地番が明瞭に示され、しかも赤の他人でも手数料さえ納めれば請求できて土地の歴史がわかる登記簿が好きです。
個人的には、人間の手で簡単に動かすことができる舗装や塀、家屋を示した一般的な地図よりも、測量され法的に引かれた筆界(※3)が示される公図の方が信用を置けます。
※3 筆界(ひっかい):筆と筆の境目のこと。
今まで水道水さんが見た中で、変わった公図があれば教えてください。
筆の形自体が、ここまで面白いのは極めて稀です。むしろ、僕が知りたいので、この記事を見ている人、僕に変わった形の筆を教えてください。これだけでは味気ないので、字界が入り乱れる飛び地だらけの公図を画像でお送りします。
そして送られた公図がこちら。
現地で一つ一つ杭打ちテープをつけて測量
ここからの質問は、水道水さんを通して土地を持っている方に回答いただいた。
そもそも、なぜこの形で登録しようとしたのでしょうか?
後世に残る遊びのつもりです。法務局に申請した日が、確かクリスマスの日で、それに伴って田んぼに星とツリーを分筆しました。 星は5角形ですので72度にしっかり計算して、ぴったり5.00㎡にしましたが、地籍調査で4.99㎡になってしまいました。
法務局に申請した時は、全部のポイントに杭を打ち、各ポイントをテープで繋ぎ星とツリーを鮮明にしましたが、今は所有権の境の杭しかありません。個人的には、分筆の図面が出来たときよりも、現地に杭打ちテープを取り付けた時の方が感動しました。当時、土地家屋調査士は日本に16000人位いましたが、こんなことをする人は私しかいないだろう!と、腹の中でニンマリしました。
全体の土地は何㎡程度なのでしょうか。
分筆前で804㎡です。
この土地に建物を建てることは可能でしょうか。
農用地(※4)のため、元々建物を建てられない土地です。 なお、「分筆」(※5)は「建築敷地の設定」とは直接関係無いため、分筆してもしなくても、建築条件は全く変わりません。
※4 農用地:農地転用できない農地(つまり、農地以外の目的では使えない)
※5 分筆(ぶんぴつ):一つの筆を複数に分割して登記すること。(今回の場合だと番地395の中に1〜4を分けて登記することを指す)当然ながら測量が必要で、土地家屋測量士に依頼すると、数十万円のお金がかかる。
公図に仕掛けられたプロの技。あなたの住むところの公図を見てみると、もしかしたら新しい発見があるかもしれない。