楽器初心者だけどスウェーデンの伝統楽器「ニッケルハルパ」でベートーヴェンを弾いてみた

楽器未経験でも大丈夫って本当…?
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「ニッケルハルパ」という楽器をご存知だろうか。(多分)みんな知らないと思う。私も知らなかった。

9月にスウェーデン関連商品ばかりを売ってるスウェーデン大使館の自販機がTwitterで話題になった。

起点となった紹介ツイートを投稿したのはNana@Sweden(@nana_musik)さんこと小柏奈々さん。こちらの小柏さんが、「ニッケルハルパ」の奏者なのだ。

小柏さんに、自販機について取材をしつつ、「ニッケルハルパってなんなんだろう」とずっと気になっていた。

そんな小柏さんが、ニッケルハルパの体験レッスンを催しているというお話をうかがった。

筆者は、演奏経験といえば幼稚園でカスタネットを叩いたことがある程度だが「全く未経験でも大丈夫!」とのこと。好奇心に任せて体験してきたぞ。

初心者が触っちゃダメなやつ感がすごい

今回参加したのはふ凡社と、Togetterオリジナル記事編集部員の紫蘇、同じく編集部員Aの3人。

3人ともニッケルハルパに触ったことはないが、紫蘇と編集部Aは吹奏楽経験者なのでアドバンテージがありそうだ。

小柏さんの教室に入ると、ちょっと大きめのヴァイオリンくらいの楽器がいくつも鎮座していた。

これがニッケルハルパだ!

パッと見はヴァイオリンに近いが、よく見ると弦の数がかなり多く、また弦楽器なのに鍵盤みたいな機構がついている。

複雑なビジュアルに「どう見ても初心者が迂闊に触っちゃいけないタイプの楽器だこれ」と思った。十抹くらいの不安が心をよぎる。

一度は歴史が途絶えた楽器

体験レッスンは「ニッケルハルパとはなんぞや」という基本的な情報を知る座学からスタートした。

ニッケルハルパはスウェーデンの伝統楽器。綴りは”Nyckelharpa”で、ニッケルが「鍵盤」でハルパが「弦楽器」の意だ。

スウェーデンのウップランド地方を中心に伝わり、日本でいうと津軽三味線とかに近い扱いらしい。

ニッケルハルパの起源は、実はまだよく分かってない。1350年くらいに建てられた教会のレリーフにそれっぽい楽器があるみたいだが、いつごろからあったのかは研究中だという。

というのも、一度はニッケルハルパの歴史が途切れていた時代があったんだそうだ。

小柏さんはじめ、今の奏者が使っているニッケルハルパは、1930年くらいに復興・改良された現代版である。

楽器として基本的な構造は同じものの、統一規格がなく、サイズやデザイン、仕様はバラバラ。キーの形や数まで違うこともあるそうで、職人さんが好きに作ってるそうだ。自由。

たくさんある弦の役割は

続いて、ニッケルハルパの仕組みを学ぶ。

「演奏弦」という太い弦が4本、「共鳴弦」という細い弦が12本張られている。

弦で弾くのは演奏弦だけで、共鳴弦はその名の通り演奏弦の音を共鳴させるためにある。共鳴弦のお陰で、フワッとした音が出るのだ。

演奏弦は、高い方からラ、ド、ソ、ドの音が鳴る。音の間隔が不均等で、不思議な並びになっているが、これがスウェーデンの伝統音楽を弾きやすい音程なんだそうだ。

そして、ニッケルハルパの最大の特徴とも言える鍵盤部分。

ずらりと並んだ鍵盤

鍵盤は三段あり、一段目に20鍵、二段目に10鍵、三段目が7鍵となっている。

この時点で筆者の頭はパンク。こんな複雑な楽器を、本当に初心者が扱えるのか!?

弦を引けば「あの店」が浮かぶ

歴史と構造を習ったところで、いよいよニッケルハルパのレッスンに突入だ。

まずニッケルハルパの持ち方のレクチャーを受ける。ストラップを首にかけ、首と肘で本体を支える形だ。

ずっしりとしているので、長時間弾けるようになるためには慣れが必要そう。

楽器に慣れてなさ過ぎて「ホバーハンド現象」を発症する筆者

弓は親指、人差し指、中指で軽く握る形で持ち、ニッケルハルパに対して垂直に動かすように扱う。

垂直に弦を引くので角度がやや難しい

演奏弦に弓をあててひと弾きすると、体にじんわり響く優しい音が流れる。小柏さんによると、ニッケルハルパはお腹に響きが届くので、奏者が一番気持ち良く聴ける楽器なんだそうだ。ステキ。

何回か音を出しているうちに、なんだか無印良品の店内にいる気分になってくる

そう、実は無印良品で流れているイイ感じの弦楽器のBGM、あの中にニッケルハルパが使われている曲があったのだ!

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