「アニメ好き職員が知事に推して実現」埼玉県はなぜVtuberを観光大使に? 県職員と春日部つくしに話を聞いた
こんにちは。埼玉県生まれ埼玉県育ちのライター、シュゴウです。海を見ると、異常にテンションが上ります。
最近、埼玉に関するこんな動画がネットでバズっていたのをみなさんはご存知でしょうか?
埼玉県鬼畜で草 https://t.co/Neyj2OUMsx
— 春日部つくし💿バーチャル埼玉県民 (@kasukaBe_nyoki) 2023年3月19日
この動画は2021年から埼玉バーチャル観光大使を務める春日部つくしさんが投稿したもので、YouTubeでは380万回も再生され話題になりました。
今でこそVTuberを観光大使に任命する都道府県は少しずつ増えてきましたが、2021年当時、VTuberが県の観光大使になるのはなかなか異例のことでした。
さらに、都道府県がVTuberを観光大使に任命する場合、VTuberを自分たちの手で新たに誕生させるか、企業の事務所に所属しているVTuberとタッグを組み観光大使に任命するケースがほとんどなのですが……
なんと、埼玉県は企業に属さず個人で活動しているVTuber 春日部つくしさんを観光大使に任命。その結果、「県&個人VTuber」という異例のタッグが誕生しました。
「埼玉県庁では法人相手との取引がほとんどなので、個人の方との契約はほとんど例がなかった」
「まず、VTuberとは何か? というところから勉強を始めた」
そう語るのは、埼玉県観光課 DMO支援・観光振興担当の佐藤公彦さんと、蛭間彩恵さん。
今回は、埼玉県観光課のお二人に加え、埼玉バーチャル観光大使を務める春日部つくしさん(@kasukaBe_nyoki)にリモート取材を実施。
埼玉バーチャル観光大使の誕生秘話や、バーチャル観光大使の影響力について語ってもらいました!
全てはアニメ好き職員のアイデアから始まった!?
本日はよろしくお願いします! まず、「埼玉バーチャル観光大使」とはどのような存在なのか教えていただけますか?
「埼玉バーチャル観光大使」は、埼玉県の観光地や物産品の魅力をPRしてもらうVTuberの観光大使のことで、2021年11月より春日部つくしさんに活動していただいています。
「ちょこたび埼玉公式YouTubeチャンネル」への動画投稿やTwitter(X)での情報発信など、ネット上で埼玉県の魅力を発信してもらうのが主な活動ですね。
最近はVTuberが観光大使を務めるケースも少しずつ増えてきましたが、2021年当時はかなりレアケースだったと思います。なぜ、埼玉県はVTuberを観光大使に起用したのでしょうか?
今はもう他部署に異動してしまったんですが、当時いたアニメがすごく好きな職員が「県のPRにVTuberを使いたい!」とアイデアを出しまして、そこから観光課内で埼玉バーチャル観光大使事業の検討を始めました。
アニメが好きな職員の熱意が県を動かしたんですね……! ちなみに、県の事業となると、事前に埼玉県知事にも説明して承認を得たりするんでしょうか?
当時、そのアニメ好きの職員が知事のところまで「こういうのやりたいです!」と説明に行っています。
その際に知事からは、「面白そうだからやってみたら?」と言っていただけて、正式に事業として進める形になりました。知事も結構乗り気だったようです。
確かに、埼玉バーチャル観光大使の任命式に知事ご本人が登場されていますが、
めっちゃノリノリ……!
春日部つくしさんは、埼玉バーチャル観光大使の任命式で知事と対面されてますが、このときの印象はどうでしたか?
知事は目と目を合わせて任命書を渡してくださって、本当に、すごく緊張したのを覚えていますわ!
そんな春日部つくしさんに対していじけるコバトンがめちゃくちゃカワイイので、読者のみなさん、ぜひ任命式の動画を見てください。
「VTuberに不慣れゆえ……」オーディション募集要項の年齢を18歳以上にしてしまった結果?
知事のGOサインを貰って、いよいよ埼玉バーチャル観光大使のオーディションの募集が始まるわけですけれども、春日部つくしさんはオーディションの募集を知ったときはどんな心境だったのでしょうか?
募集の発表を観た瞬間、思ってもみないチャンスだと思いましたわ!
あーしはもともと埼玉好きVTuberとして活動していたんですけど、やっぱり個人でできる範囲は限られるので……。
だから、「埼玉県の職員のみなさんと一緒に埼玉をより魅力的に発信する機会がもらえるなんて、これはやるしかない!」と思ったのですが、
……が?
実は、オーディションの募集要項には「18歳以上であること」と記載がありまして。でも、あーしは当時17歳だったので……
18歳以上であること!?!?!?!?
— 春日部つくし💿バーチャル埼玉県民 (@kasukaBe_nyoki) 2021年6月8日
募集要項の年齢条件に対する春日部つくしさんの当時のツイート
慌てて誕生会を開催して18歳になりましたわ。
解決方法がVTuberならではすぎる……。
「18歳以上であること」って人間だったら大抵の人はクリアしてますけど、VTuberの場合は「永遠の15歳」みたいな方も結構多いから、人によっては悩ましいところかもしれませんね……。
県としては、事務所に所属されてない個人の方とも契約する可能性があったので、その場合は未成年とは契約できないということで「18歳以上」と要件を入れたのですが、VTuberさんの場合、誕生した1年目を1歳とカウントされてる方もいたりして。
確かに、VTuberのみなさんは我々人間と同じ年の取り方をするとは限らないですよね。
そうすると、その人はもうダメなの?みたいな問題が発生してしまいまして。それで、その後「18歳以上」という募集要件は外しました。
18歳って条件は無くなっている…??
— 春日部つくし💿バーチャル埼玉県民 (@kasukaBe_nyoki) 2021年6月11日
年齢条件が無くなった事に対する春日部つくしさんの当時のツイート
我々もVTuberさんに対して不慣れだったので、どういう募集要項を書いていいのか分からなかったというのが正直なところですね……。春日部つくしさんにはご迷惑をおかけしました。
いや、今となっては、むしろいいハプニングだったなと思っています!
オーディション段階からVTuberに対して色々と考えていただけたのが感じられて、ファンの方から見ても、プラスの方向に映っていたかなと思いますわ。
埼玉県に弄ばれる一般埼玉人 https://t.co/T7YOTh0k2n
— 春日部つくし💿バーチャル埼玉県民 (@kasukaBe_nyoki) 2023年3月21日
一連の出来事を動画で振り返った春日部つくしさんのツイート
やっぱり、お役所である県庁が馴染みのないVTuberさんとタッグを組むのは、最初は色々と大変だったのでしょうか?
そうですね、埼玉県庁では法人相手との取引がほとんどなので、まず個人の方との契約自体がほとんどないんですね。
そういった意味でも特殊でしたし、私はVTuber文化に全然明るくなかったので、まずは「VTuberってこういう存在なんだ」と学ぶところから始めました。
県の職員になってネットカルチャーを勉強することになるなんて、なかなか予想外の事態ですよね。
ずっと行政的な仕事をしていたので、「今の若い人たちに刺さるようネットで情報発信をしていく」という未経験の取り組みには、最初はすごく苦労しましたね……。