【デマ注意】「硫酸をかぶってしまった時はどうすればいい?」漫画に突っ込んだツイートが化学クラスタに総ツッコミを食らう。(更新)
MSDS情報再掲
http://www.naitoh.co.jp/msds/msds-092201.html
皮膚に付着した場合:
直ちに多量の水で洗い流す。この場合、アルカリ液などを用いて硫酸を中和してはならない。部分的に硫酸の付着した衣服は直ちに全部脱ぎ取り、多量に付着した時は衣服を急に脱ぎ取る前に、多量の水で洗い流す方が良い。重症の薬傷あるいは広範囲にわたる薬傷の場合には、速脈、発汗、虚脱の様なショック症状をいつ起こすかもしれないので、このような症状が現れた場合には患者の背中を下にして寝かせ、早急に医師を呼ぶ。医師の指示なしに油類や塗り薬を薬傷部に塗ってはならない。
(※他に、目に入った場合、揮発した蒸気をすってしまった場合などについても記述があります)
中和するの?しないの?について
おそらく、厳密なベストの方法としては、啓文館の教科書通りなのだろうと思います。
ではなぜMSDSには「中和するな」とい強く書かれているのかを考えてみたのですが、MSDSマニュアルは、産業の現場で使われるものです。おそらくその場に適切な種類と濃度の中和用の薬剤があるとは限らず、無理してありあわせの物を使って中和しようとして事態を悪化させるリスクを避けることを念頭に置いたマニュアルなのかもしれません。
作業現場には教科書通りの素材があるとは限らないし、パニックになって中和剤を探し回って時間を無駄にしたりする危険を避けるためなのかなと思いました。
その辺、詳しい方のコメントを頂けると幸いです。
有益なコメントの転載
コメント欄より転載
「中和するの?しないの?」について
考察は「へぼ担当@SafeMode」@hebotanto さん。
(コメントありがとうございました)
「中和するの?しないの?」について 工業系労働安全衛生教育では、MSDSが必読となり、これから反した行動で災害が拡大した場合、監督者他の責任が問われます。その上で「中和するな」との記載理由は「【誰にでも】確実に適切に迅速に中和」が可能であれば「なお書き」程度はあるでしょう。
しかし、MSDSは「簡潔+最短距離」で産業界他使用者の安全確保を目的とします。 つまり「下手に中和しようとしてアルカリ」を用意しても、被災箇所以外の箇所にアルカリがかかれば二次災害です。 以上よりMSDSで「中和剤を要求しない」のは二次災害発生を避け、「当初から絶対になおかつ効果が高い大量の水での希釈」を要求。
その上で、追加策として「二次災害の無い完璧な中和」と「衣服(作業服・白衣他)の切り裂き除去」のどちらが、当該緊急時においても確実に出来るかと言えば後者です。 (そもそもどれくらい浴びたため、どれくらいの中和量が必要か等、そうそう簡単には分かりません。)
以上、工業系労働安全衛生の観点からは、MSDSの「簡潔+最短距離(+確実)」な安全確保を目指すため、敢えて「中和」を記載せず。特に皮膚付着の場合「上記の二次災害危惧により中和を禁止」までしているものと考えます 当該部分抜粋:(皮膚に付着した場合:(中略)アルカリ液などを用いて硫酸を中和してはならない。)
【まとめ】 工業系労働安全衛生では、MSDSを「簡潔+最短距離(+確実)」な安全確保を目的で使用。 よって、皮膚付着の場合「アルカリ中和」が二次災害を起こす危険性が高いため、「中和禁止」を記載。 それ以外の場合、「特記してまで中和を否定こそしない」が、敢えて中和を記載せず。 まず、大量の水での希釈継続、その次に効果のある衣服の除去を指示する記載としたと考えます。
その他の有益なコメントの転載
- しましまたまご(半熟) @shima_tamagoさんのコメント。
無限希釈という言葉がありまして、変に考えて中和しようとするより大量の水をかけ続けた方が簡単に中性に近付き、まとめ内にある通り冷却効果も期待できます。
実験室の蛇口にホースが付いている理由の一つに「薬品を洗い流すときに患部に届きやすい(そして実験室の床は排水口がついている場合が多い=太股などにかかった場合でも対応しやすい)」ことがあるのも豆知識。
実験室のシャワーは清潔な水が出る保証がなく途中で止められないので本当に緊急時用と教えられました。
- グレイス @Grace_sswさんのコメント。
無限希釈っていう言葉があって、溶媒を無限にぶち込んでやると濃度は限りなく0に近くなり、結果として反応もへったくれもなくなるのです。
SDSにおける緊急対応の基本理念はこれで、とにかく大量の水をぶっかける、水桶に叩き込む、シャワーでびっしゃびしゃにするなどで大概の薬品は対応可能です。
あと、最近の緊急対応で変わったところの一つに「無理に吐かせない」というのがあります、一緒に覚えておきましょう。
「無理に吐かせない」のは、基本的には誤飲を防ぐためです。肺に入ったりするほうが重篤な症状になる可能性があったり、毒物ではなく胃液や未消化物が肺に入った場合でも肺炎の危険があります。
そもそも吐くという行為自体が体力を消耗させる面があり、素人が行わせるには危険なので多量の水を飲ませて無理に吐かせず、救急隊員の到着を待つというのが割とポピュラーな考えです。
あくまで多くの薬剤に使われている対処法というだけです。全てにおいて対応出来るわけではありません。基本的にはSDSに則って対応してください。
- TD-M18もっこㄘん @Mokko_Chinさんのコメント。
「中毒事故が起こったら 絶対に吐かせてはいけないものの例・他(日本中毒情報センター)」
https://www.j-poison-ic.jp/general-public/response-to-a-poisoning-accident/at-home/
※わかりやすい一覧表があります。
- ねこまろくはち㌠ @nekoma68さんのコメント。
漫画は室内だから大丈夫だとは思うけども、全身に水をかけるのなら、冷水は避けた方が良いかも。
・温水と冷水が混合されて、ぬるま湯、適温水が供給されることが最良。
※急な冷水を浴びると心臓まひ等の恐れがあります。 http://n-encon.co.jp/msds_ansi_z358_1
- R.Murakami(仮名) @murakami_rさんのコメント。
服を脱ぐのが先か後かは場合によるが、濃硫酸が皮膚に付いたら大量の水一択だな。緊急シャワーは定期的に流しておかないと、錆で真っ赤な水が出て悲惨なことになるから注意な。
高輪のアシッドアタックについて追記(2021.08.26.)
日本でもついに…。被害者の方の早い回復をお祈り申し上げます。
【東京・白金高輪駅 硫酸かけて逃走 現場から中継】 きょう午後9時すぎ、東京・港区の東京メトロ・白金高輪駅で、中年の男が男性の顔に硫酸をかける事件があり、男性と近くにいた女性の2人が顔などにやけどを負いました。男は現在も逃走中。現場からのリポートです。 news24.jp/society/ pic.twitter.com/658Oy6h31Y
2021-08-24 23:07:42@news24ntv 硫酸をかけられるとどうなるか、アシッドアタックで検索してください
2021-08-24 23:52:13@news24ntv あと右手に白手袋してたら逃げよう、、明らかにおかしいでしょ
2021-08-25 10:47:54こないだのサラダ油案件以降も、別にセキュリティレベル上げたりはしてないのね…。 twitter.com/news24ntv/stat…
2021-08-24 23:29:34街中でこんな目に合うことなんてあってはならんと思うんだが、何かの折に硫酸事故があるかもなので、知ってて損はないスレがこちら。 togetter.com/li/1189233
2021-08-24 23:40:16@4cnet うん。でもいまだに「硫酸に水は禁忌」で止まってる方もおられ。状況や条件も勘案せねばで、それがないにしてもまず大量の水、と認識しとったです。
2021-08-25 01:04:13怖いのは少量の濃硫酸をこぼしたり、飛沫で飛ばしたときだよ。長時間見えない影響が残るので、とにかく大量の水で洗浄して 【デマ注意】「硫酸をかぶってしまった時はどうすればいい?」突っ込んだツイートが化学クラスタに総ツッコミを食らう。 - Togetter togetter.com/li/1189233 @togetter_jpより
2021-08-26 00:57:45関連まとめ・発火元「バスりたい欲求のほうが上だった」前後のまとめ
2023.01.20.現在生きているリンクのアーカイブ集
将来的に404になった場合はこちらを参照して下さい。
・SDS(MSDS)ガイド(日本ケミカルデータベース株式会社)
https://web.archive.org/web/20221223202345/http://www.jcdb.co.jp/features/sds/
・職場のあんぜんサイト:化学物質: 硫酸(発火事例紹介)
https://web.archive.org/web/20220816111924/https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0626.html
・硫酸協会資料
https://web.archive.org/web/20221227043456/http://www.ryusan-kyokai.org/data/data.html
■安全データシート(SDS)濃硫酸
https://web.archive.org/web/20221227044204/http://www.ryusan-kyokai.org/data/pdf/SDS1.pdf
■安全データシート(SDS)薄硫酸・希硫酸
https://web.archive.org/web/20221227045349/http://www.ryusan-kyokai.org/data/pdf/SDS3.pdf
・「なおアルカリ性の溶液で中和してはいけない。」
硫酸,純正化学株式会社安全データシート
https://web.archive.org/web/20160803184115/http://junsei.ehost.jp/productsearch/msds/83010jis.pdf
株式会社 樋江井商店「濃硫酸」
https://web.archive.org/web/20210825072024/https://www.naitoh.co.jp/msds/msds-092201.html
・引用先資料リンクつきツイ>ロスト
・日本エンコン株式会社HP「緊急用シャワーの設置義務について」
https://web.archive.org/web/20210826115912/https://www.n-encon.co.jp/esew/msds-ansi-z358-1/
・「中毒事故が起こったら 絶対に吐かせてはいけないものの例・他(日本中毒情報センター)」
新HP:https://www.j-poison-ic.jp/general-public/response-to-a-poisoning-accident/at-home/
旧HP:http://www.j-poison-ic.or.jp/public.nsf/7bf3955830f37ccf49256502001b614f/0d5b6110ba4c977e49257d46003dc32c?OpenDocument
新HPアーカイブ:https://web.archive.org/web/20221204081105/https://www.j-poison-ic.jp/general-public/response-to-a-poisoning-accident/at-home/
旧HPアーカイブ:https://web.archive.org/web/20200913231536/http://www.j-poison-ic.or.jp/public.nsf/7bf3955830f37ccf49256502001b614f/0d5b6110ba4c977e49257d46003dc32c?OpenDocument
※わかりやすい一覧表があります。